K. Inoue
(更新)
仮定法を勉強しているときに必ず登場する「if it were not for~」という表現があります。
「なんか見たことあるけどどんな意味だっけ?」、「『if it had not been for~』との使い分けは?」とモヤモヤを抱えている人も多いのではないでしょうか。
そこで今回はこれらの使い方から注意点、似た意味の別表現まで分かりやすく解説します。
ぜひこの機会にバッチリマスターしてください。
まずは形と意味を例文で確認しましょう。
if it were not for~は「(現在)~がなければ」を意味する表現です。
「もし音楽がなければ、僕の人生はつまらないものになっていただろう」
if it had not been for~は「(過去)~がなかったら」を意味する表現です。
「もし君の助けがなかったら、私はその試験で落ちていたことでしょう」
どちらも形式ばった表現ですが、よく使われるのでまずは熟語のように覚えてしまいましょう。
if it were not for~と if it had not been for~は、どちらも仮定法の表現です。
仮定法とは、簡単に言えば「現実とは異なる状況の話をする」ときに使われる文法で、現在の現実とは違う話をする場合には過去形を、過去の現実とは違う話をする場合には過去完了形を使います。
ですから、過去形を使っている if it were not for~は「(現在)~がなければ」、過去完了形を使っている if it had not been for~は「(過去)~がなかったら」という意味になるわけです。
そして主節(if を使っていない側の文)では、
を使って表現します。
さて、仮定法の「現実とは異なる状況を表す」という特徴から、「実際にはどうなのか」、という現実の状況を逆に推測できるのがこの文法の面白いところであり、理解していただきたいところです。
先ほどの例文を改めて見てみましょう。
「もし音楽がなければ、僕の人生はつまらないものになっていただろう」
「もし君の助けがなかったら、私はその試験で落ちていたことでしょう」
この2文から読み取れる現実がお分かりいただけるでしょうか。
1つ目の文が表している現実は、「(現在)音楽があるから僕の人生は楽しい」ということで、2つ目の文が表している現実は、「(過去)君の助けがあったから私は試験に受かった」ということです。
このように、仮定法の文と向き合うときには、「現実はどうか」というところまでしっかりと想像してあげられると、よりリアリティ溢れる理解ができるようになります。
ではここからは細かい使い方や注意点をご説明していきます。
if it were not for~と if it had not been for~の for は前置詞です。
前置詞は後ろに名詞(もしくは名詞のまとまり)を置くという使い方をします。
それ以外の品詞や節(S+Vのまとまり)が置かれることはありません。
ですから、「for の後ろには必ず名詞(句)!」としっかりと覚えておいてください。
if it were not for~と if it had not been for~は否定の形しかありません。
notを使わずに肯定の形にすれば「~があれば」の意味になりそうですが、その使い方は存在しないので注意してください。
× if it were for~
× if it had been for~
「もし彼らの支援がなかったら、僕はここにはいないだろうね」
このように口語では if it were not for~ の were を was にすることもできますが、これはあまり標準的ではないのでできれば使わないようにしましょう。
誰かが was を使っているのを見聞きしたときに「そういう言い方をする人もいる」くらいに理解できていれば大丈夫です。
were/was not と had not を短縮して if it weren’t/wasn’t for~、if it hadn’t been for~ とすることもできます。
「愛がなければ、何事も意味なんてなくなるだろうよ」
「もし君がいてくれてなかったら、僕は死んでいたかもしれない」
仮定法の if は省略されることがあります。
その場合、Sと(助)動詞が入れ替わる倒置が起こります。
「もし水がなければ、何も生きられないだろう」
「ジョンがいなかったら、我々は試合に負けていただろう」
「~がなければ」を表すその他の表現をご紹介します。
よくご存じの前置詞 without をそのまま「~がなければ」の意味で使うことができます。
「君の助けがなければ、我々はまた失敗していたことだろう」
but for~という表現も「~がなければ」の意味で使うことができます。
「夢がなければ、人生はつまらないものになるだろう」
without~ と but for~はいずれも過去形や過去完了形を伴わず、現在・過去の時間に関係なく使うことができます。
そのため、これらが用いられた文が仮定法かどうか、現在のことか過去のことかは文脈(主節の述語動詞の形)で判断するしかありません。
シンプルで使い勝手が良い反面、内容によく注目しないといつの話なのか分かりにくい曖昧さがあることに注意が必要です。
ちなみに、but for は文語体で、会話ではまず使われません。そればかりか書き物としても、現実的にはあまり見かけることはないでしょう。
そういう意味では多くの人が思っているほど実用的ではなく、少なくとも without と同程度に重要なものとして覚えておく必要はないと言えます。
※but for~は without よりも except~「~を除いては」のニュアンスに近く、その意味でも without と全く同義ではありません。
また、前後の繋がりによっては but for~は「しかし~のためには」とか「けれども~にとっては」のように全く別の意味でこの2語が使われることもあるため、見かけた際には文脈にもより注意を払いたいところです。
but for~の実用性と、読解時に誤解しないように気をつける必要性について、ぜひ頭の片隅に入れておいてください。
最後に、「~があれば」を表す単語をご紹介します。
ずばり、with です。
without の逆の with を用いることで「~がなければ」の逆である「~があれば」を表すことができるわけですね。
「もっとお金があれば、僕はあの腕時計が買えるのに」
いかがだったでしょうか。
仮定法では定番の重要表現である if it were not for~と if it had not been for~についてご説明してきました。
熟語的に覚えてしまうことがまずは重要ですが、それだけでは if の省略や時間の判断などに即座に対応できるようにはなりません。
まず1つ覚えたら、例文を使って何度も音読して身体に染み込ませましょう。
それができたら if を省略したパターンもまた音読。
何度も繰り返して、一体いつの話をしているのか、現実はどうなのかといった状況を瞬時にイメージできるようになってください。
もちろん、ご自身で英作してみるのも大切な練習です。
暗記+練習の合わせ技でしっかりマスターしていただければ嬉しいです。