K. Inoue
(更新)
「分詞構文か…」とその名称を聞いただけで避けたくなってしまう人は多いのではないでしょうか。
分詞構文は英文法学習の中でも難しいとされるポイントで、ここで挫折してしまう人も実際には多くいらっしゃいます。
でも分詞構文を攻略できれば、特に英語を読むという点で、一気に「英語らしさ」を受け入れられるようになる飛躍ポイントでもあります。
今回はそんな分詞構文について基本から解説していきます。
ぜひ最後まで読んで、ワンランクもツーランクも上の英語読解力を目指してください。
そもそも分詞構文とはどのようなものでしょうか?
まず、英語には分詞と呼ばれる動詞の形があります。
分詞には現在分詞と過去分詞の2種類が存在し、前者は進行形を作る「~ing」形、後者は受動態や完了形で使われる「~ed」などの形のことです。
「ああ、<be+~ing>の~ingや<be/have+過去分詞>の過去分詞のことね」くらいに考えていただくと分かりやすいかと思います。
これら現在分詞や過去分詞が、進行形や受動態などとは別に、文の情報を付け足す副詞のようなはたらきをすることがあり、これを分詞構文と呼びます。
例文を見てみましょう。
「オリヴィアは音楽を聴きながら、台所で料理をしていました」
この文では、まず「オリヴィアは台所で料理をしていた」という文があり、これに対して「音楽を聴きながら」という別の情報が付け足されています。
このように、メインとなる文(主節)に、分詞を用いてさらに何らかの情報を加える用法が分詞構文です。
例文では、listening to music の部分が現在分詞 listening を用いた分詞構文ということになります。
なお、詳しくは後述しますが、分詞構文は主には書き言葉で用いられ、会話ではあまり使われることはありません。
ですから、分詞構文は特に読解に役立つ文法という意識で学んでいただいて差し支えないでしょう。
分詞構文がどのような意味を表すかは、主節との関係や文脈に応じて変わります。
分詞構文の表す主な意味の1つが、「主節が表すことがらと同じ時点における行為」です。
分かりやすく言うと「そのとき何をしているか」ということで、「~しながら」という日本語が当てはまりやすいです。
「彼らは、その野球の試合について話しながら昼食を取った」
これは、「昼食を取った」のと同じ時点で「その野球の試合について話していた」という行為が行われていたことを表しています。
先ほどの listening to music「音楽を聴きながら」も、「台所で料理をしていた」のと同じ時点での行為を表しているのでこれに該当します。
ちなみに、分詞構文は副詞のように振る舞うため、置かれる位置の自由度が比較的高く、文末だけでなく以下のように文頭や文中でも用いることができます。
「話しながら、女の子たちは道を歩いて行った」
「少年が、ひとりごとを言いながら、その建物に入って行った」
ただし、この「そのとき何をしているか」の意味での分詞構文は主節の後ろに置かれることが多いです。
なお、主節が表すことがらと同じ時点における行為のことを「付帯状況」と呼びます。
分詞を学習する際にはとても重要なキーワードになりますので、ぜひこの機会に覚えておいてください。
主節で表される行為が、一体「いつのことなのか」、つまり「時」を表すこともあります。
「ビーチをジョギングしていたときに、美しい指輪を見つけた」
これは「指輪を見つけた」行為が「ジョギング中」だったという「時」を表しています。
「バスケットボールをしているときに、彼女は指を怪我した」
「指を怪我した」のはいつだったかというと、「バスケットボールをしていたとき」ですね。
分詞構文で表す動作と主節が表す動作が連続して起こることを表すこともできます。
「自分のポケットからカギを取り出して、彼は箱を開けた」
「カギを取り出す」動作の次に「箱を開ける」動作が連続して起こっています。
「バスはあと10分で出発し、東京駅には明朝に到着します」
「10分後に出発」した後、「明朝に到着」という行為が連続していますね。
このように、分詞構文と主節のどちらの行為が先か後かは文脈によります。
主節の内容を受けて、「そしてどうなったか」という「結果」も分詞構文で表すことができます。
「台風が町を襲い、作物や農業施設に甚大な被害をもたらした」
「台風が襲った」ことの結果として「甚大な被害」が生じています。
「グラスが床に落ちて、大きな音がした」
これも「グラスが床に落ちた」ことによって「大きな音がした」という結果を表しています。
主節で表す行為が起こった「原因・理由」についても分詞構文で表すことができます。
「やることがなかったので、私は早く寝た」
「早く寝た」理由は「やることがなかった」からです。
「気分が悪かったので、彼女は家にいた」
「家にいた」理由はもうお分かりですね。
※これら以外にも「譲歩」や「条件」といった意味になることもありますが、これらは登場頻度が低いためこでは割愛させていただきます。
ここまで分詞構文の表す主な意味を見てきましたが、あらゆる分詞構文がこれらのどれか1つの意味に限定されるわけではありません。
文によっては、一体どの意味を表しているのか、その文だけでは判別できないこともよくあります。
「人間を見ると、サルは逃げ出した」
この1文だけでは、サルは人間を見た「時」に逃げ出したのか、人間を見た「から」逃げ出したのか分かりません。あるいは「見て→逃げた」という動作の連続を伝えたいのかもしれません。
非常にあいまいではありますが、その意味のあいまいさを残すことができることが分詞構文の特徴でもあるのです。
場合によっては、文章を読む人によって解釈が異なることさえありえるため、そこを狙って、小説などではあえて分詞構文を用いる作家もいると言われているほどです。
逆に、意味の明確さや論理が重視される文章では分詞構文は避けられる傾向にあります。
分詞構文には、100%確実で明確な意味が必ずしもはじめからあるわけではないと心得ておいてください。
前後の文脈にしっかりと意識を向けることの大切さをよく分かっておいていただければと思います。
ここまではあまり細かい文法の説明はしてきませんでしたが、ここから少し文法面に踏み込んでいきたいと思います。
まずは分詞の意味上の主語についてです。
分詞構文は現在分詞や過去分詞という、動詞の変化形を用います。
現在分詞も過去分詞も、元をたどれば動詞だということですね。
動詞ということは、「一体誰(何)がその動作を行うのか」という行為の主体者、つまり主語が存在しなければなりません。
この分詞の行為を行う主体者のことを、「分詞の意味上の主語」と呼びます。
以下確認してみましょう。
「オリヴィアは音楽を聴きながら、台所で料理をしていました」
最初にご紹介したこちらの例文における分詞構文 listening to music の意味上の主語は誰だと思いますか?
言い換えれば、「誰が音楽を聴いていたのでしょう?」ということです。
その答えはもちろん、オリヴィアですね。
ご紹介してきた例文では全て当然のこととして意識していなかった方も多いと思いますが、とても重要なことなので改めでご説明します。
実は、分詞の意味上の主語は、文(主節)の主語と一致するという原則があるのです。
「話しながら、女の子たちは道を歩いて行った」
「やることがなかったので、私は早く寝た」
これらの文では、「話していた」のは文の主語である「女の子たち」であり、「やることがなかった」のも同じく文の主語である「私」なのです。
このことが分かっていれば、突然登場したように見える分詞の動作主に迷うことはありません。
ところで、分詞構文の意味や意味上の主語を理解する助けになるのが、接続詞を用いて前後半の2文へ書き換えてみることです。
たとえば、
「ビーチをジョギングしていたときに、美しい指輪を見つけた」
という文は接続詞 when を使って、
ビーチをジョギングしていたときに、美しい指輪を見つけた
と書き換えて考えることができますし、
「気分が悪かったので、彼女は家にいた」
こちらの文では、
という具合に、接続詞 because を使った文に置き換えて考えることができます。
このとき、接続詞を用いた側の主語(つまり分詞の意味上の主語)は、すでに登場している「私」や「彼女」でなければ文意が通らず、自分で勝手に想像して別人を主語に置くことなどもできないことが分かるのではないでしょうか。
よく学校のテストや問題集などでは、接続詞を使った文と分詞構文の書き換え問題が出題されますね。
これは分詞構文が接続詞的なはたらきを持つからに他なりませんが、ゆえに誰(何)が意味上の主語で、どんな接続詞を用いると文意がすっきりと通るのか、を考える良い練習になると思います。
分詞の意味を考える際には、意味上の主語と接続詞への意識を持ってみてください。
文の意味を明確にするために、あえて接続詞を置いた分詞構文が使われることもあります。
「バスケットボールをしているときに、彼女は指を怪我した」
この文では while「~しているとき・間に」を用いて「時」の意味であることを明確にしています。
このように接続詞を置くケースでは、while や whenといった「時」に関係する文脈であることが多いです。
分詞には現在分詞と過去分詞の2種類があると言っておきながら、ここまでの例文では全て現在分詞「~ing」を用いたものしかご紹介してこなかったことに気づいておられる方も多いでしょう。
ここでは過去分詞を用いる場合との使い分けをご説明していきます。
現在分詞と過去分詞の違いは、「能動か受動か」です。
現在分詞は「(Sは)~する」という「能動」を表し、過去分詞は「(Sは)~される」という「受動」を表します。
そして分詞構文において、現在分詞と過去分詞のどちらを使うかは、分詞構文の意味上の主語との関係で考えることになります。
たとえば、
「自分のポケットからカギを取り出して、彼は箱を開けた」
この文で Take について、Taking と Taken のどちらを用いればよいか考えるとき、意味上の主語である he「彼」との関係に注目します。
「彼」はカギを「取り出す」のであって、「彼」が「取り出される」のではありません。
つまり Take は能動の意味でなければならないため、これを表す現在分詞 Taking を用いることになります。
では次はどうでしょうか?
「飛行機から見ると、街は地図のように見える」
See を意味上の主語である the city との関係から考えます。
「街」は飛行機から「見られる」ものであり、「街」が何かを「見る」のではありません。
つまり「見られる」は受動の意味であるため、ここでは過去分詞 Seen を用いることになります。
日本語訳では「見ると」と能動的な訳し方になっていますが、これはあくまで自然な日本語を目指したためにそうなったにすぎません。
日本語訳ではなく、英語として適切な意味を考えることを心がけてください。
過去分詞を用いた例文を以下にご紹介します。
意味上の主語や補える接続詞の意味も合わせて考えてみてください。
「簡単な英語で書かれているので、この本は容易に読むことができます」
※「本」は「書かれる」という受動の関係
「金でできているので、そのネックレスは高価だ」
※「ネックレス」は「作られる」という受動の関係
「冷蔵庫に入れてあるので、ボトルは冷えているはずだ」
※「ボトル」は「冷蔵庫に入れられている」という受動の関係
ここから、分詞構文のいろいろな形や表現についてご紹介していきます。
まずは否定形の分詞構文からです。
分詞構文の意味内容を否定的なものにしたいとき、not や never といった否定語を分詞の前に置きます。
「気分がすぐれなかったので、私は少し休息した」
「電話番号を知らなかったので、彼は彼女と話すことができなかった」
「決してあきらめなったので、彼はついにコンテストで優勝した」
否定語を分詞の前に置くだけなのでシンプルですね。
分詞構文の表す内容が、主節の表す「時」よりも前に起こったものである場合、<having +過去分詞>の形にします。
これを完了形の分詞構文と呼びます。
「以前にイタリアに住んでいたので、彼はその歴史についてよく知っている」
「住んでいた」のは「知っている」よりも前の出来事ですね。
このように分詞構文の表す「時」が、主節の表す「時」よりも後ろにズレている場合に完了形の分詞構文を用います。
「以前にその本を読んだことがあったので、私はそれをもう1度読みたくはなかった」
これも、「以前に本を読んだ」のは「もう1度読みたくなかった」と思った「時」よりも前のことで、両者の間に時間的なズレが生じています。
接続詞を用いて2文にしてみると時制の違いがよく分かります。
前半部分は主節の時間から遡ったことを表すため、過去形や現在完了形、過去完了形が用いられることになるわけです。
分詞の意味上の主語は主節の主語と一致するのが原則であることをすでにご説明しました。
ところが文によっては、両者が必ずしも一致しないことがあります。
その場合には、分詞の意味上の主語を分詞の前に置くことになります。
これを独立分詞構文と呼びます。
「とても暑かったので、私たちは泳ぎに行った」
「泳ぎに行った」行為の主語は「私たち」ですが、「とても暑かった」の主語は「私たち」ではなく、天気や天候を表す It です。
分詞の意味上の主語と主節の主語が異なっているため、分詞の意味上の主語である It をそのまま being の前に置いています。
これが独立分詞構文です。
接続詞を使って表すと次のようになります。
it と we の2種類の主語が登場していることがよく分かりますね。
「何の助けもなかったので、私はそれを1人でやらねばならなかった」
このように there 構文が用いられる場合にも独立分詞構文の形になります。
やはり接続詞を用いると分かりやすいでしょう。
there 構文 のthere は副詞であるとよく言われますが、そうではなく存在を表すための形式的な主語であると考えるため、being の意味上の主語として独立分詞構文に用いられるのです。
分詞構文はとにかく分詞で始める、のように思っているとまったく意味を成さない文を生んでしまうことにもなりかねませんから、分詞の意味上の主語には注意を払うようにしておいてください。
たとえ分詞の意味上の主語と主節の主語が異なっていても、前者が「一般・不特定の人々」や「話し手本人」である場合、これをわざわざ示さないこともあります。
このような表現は慣用的な表現として定着しているため、意味上の主語を気にする必要はありません。
以下にいくつか挙げておきます。
また、分詞の意味上の主語を表すものにも慣用的な表現が存在します。
これらは全てお決まりの表現だと思って、あまり難しく考えずに覚えてしまいましょう。
最後に、分詞構文を使うことの意図について触れておきます。
分詞構文は主には書き言葉であるとすでに述べましたが、それは分詞構文が構造的にシンプルなものであるからに他なりません。
わざわざ接続詞を用いて文を展開するよりも、分詞のまとまりをポンっと置いて情報を補足するというやり方をした方が、言葉数が少なく済むことで話にテンポが生まれ、リズム感やスピード感を演出できるのです。
そのため、スラスラ読み進めてもらいたい新聞記事や小説などと相性が良いのです。
接続詞が無い分、文意にあいまいさが生じることは分詞構文のデメリットと言えますが、すでにご説明したように、そのデメリットすらある種の面白さとなって、小説などでは多様な解釈を可能とするテクニックとして採用され、書き言葉の可能性を広げる一助ともなっています。
一方、分詞構文は会話ではあまり使われることがありません。
書き言葉と比べて文脈や状況設定に乏しい会話では、その意味が伝わりにくくなってしまうからです。
会話で分詞構文が登場するとすれば、そのほとんどは付帯状況としての使い方です。
何か発言してから、そのときの状況を追加的に加えるのは接続詞では逆に難しく、一言で「~していてね」のようにシンプルに説明できる分詞構文は使い勝手が良いのです。
ただ、いきなり会話で使いこなすのも難しいと思いますので、練習するとすればまずは書き言葉としてゆっくりと取り組むことをおすすめします。
それでも分詞構文は意味のあいまいさを生んでしまいがちですから、接続詞を使って正確に意味を伝える練習も忘れないようにしてください。
いかがだったでしょうか。
分詞構文は「難しい」と敬遠されがちな英文法です。
それは、主節と分詞構文がどのような意味で繋がるのか、意味上の主語は何か、など目に見えない部分まで見つめる努力が要求されるものだからでしょう。
また現在分詞と過去分詞の使い分け、時制のズレの見極めなど、文法的なチェックポイントが多いことも挫折要因と言えるでしょう。
しかし、分詞構文は読解において欠かすことはできませんし、感覚的につかめるようになればとても便利で面白いものであることに気が付きます。
分詞構文が醸し出す独特の雰囲気や品性のようなものを感じ取ることができれば、読み物にどっぷり浸かるきっかけともなってより楽しみが増します。
その意味で、分詞構文は読み物を楽しむためのスパイスのようなもの。
難しいと思うのは最初だけです。
たくさんの英文と触れ合い続ければ必ず慣れて感覚を掴むことができるようになります。
それを目指しつつ、分詞構文ってどんなものだったかな、と改めて確認するときにこの記事をご参考にしてくだされば嬉しいです。