K. Inoue
(更新)
「~だよね?」「~でしょ?」と相手に確認したり同意を求めたりすることは日常的によくありますよね?(←まさにこれ)
そんなよくある表現を中学校の英語で学習したのを覚えておられるでしょうか。
付加疑問文と呼ばれるこの文法は、試験などではあまり問われることがないのでいつの間にか忘れてしまったり、覚えていてもその答え方につまずいてしまったりと、意外と完璧には身についていない人が多いものです。
そんな付加疑問文について、今回改めて解説していきます。
作り方はもちろん、イントネーションによるニュアンスの違いや間違えやすい答え方、中学校では習わないちょっと意外な形や豆知識まで幅広くご紹介しますので、「へえ、そんな言い方もあるんだ」と楽しみながら学んでいただけると嬉しいです。
付加疑問文とは、「~ですよね?」「~でしょ?」「~ではありませんよね?」と相手に念を押したり、話の内容を確認したり、さらには同意を求めたりするときに使う文です。
「リサは素晴らしい歌手ですよね?」という具合に、いったん何らかの事柄を述べた後で「~ですよね?」という“問いかけ”を“付け加える”ことから付加疑問文と呼ばれます。
付加疑問文は、メインとなる文の後ろに<be動詞/助動詞+主語>の形を付けることで作ります。
※ここで言う助動詞には、can や will などの他、do、does、have なども含みます。
まずは肯定文の付加疑問文から見ていきましょう。
メインとなる文が肯定の場合、付加疑問は<be動詞/助動詞の否定形+主語>の形を使います。
「君は大阪出身だよね?」
「リサは素晴らしい歌手ですよね?」
それぞれの文で使われている are や is を否定形にし、その後ろにメインとなる文の主語を置くことで完成します。
このとき、aren’t、isn’t のように普通は短縮形を用いることと、メインの文の主語が Lisa のような固有名詞の場合には、付加疑問では代名詞(この場合she)を使うことに注意してください。
また、メインの文の主語が This、That、It といった単数の代名詞の場合には付加疑問では it を、These、Those、They のように複数の場合には they を使います。
「これすごく綺麗だね?」
「それらはいいよね?」
「君は釣りが好きだよね?」
「それおいしいよね?」
一般動詞の場合、助動詞 do/does を使って付加疑問文を作ります。
主語が三人称単数の場合には does、そうでなければ do を使います。通常の疑問文や否定文のときと同じですね。
can や will などの助動詞の場合も考え方は同じです。
「彼らはパーティーに来られますよね?」
「彼は正午までには来ますよね?」
また、完了形で使う have についても同様です。
「もうそのことについては聞きましたね?」
時制が過去になった場合も簡単で、be動詞や助動詞も過去形にして合わせるだけです。
「あなた寝てましたよね?」
「彼がそれを君に言ったんだね?」
メインとなる文が否定の場合、付加疑問は<be動詞/助動詞+主語>の形を使います。
肯定のときと異なり、be動詞や助動詞を否定形にしません。
「彼は驚いていないでしょ?」
「彼らはそのことについて喜んでいなかったんだね?」
「合格しなかったんだね?」
「ボブは名古屋に行ったことがありませんね?」
※never「一度も・決して~ない」、hardly「ほとんど~ない」、rarely「めったに~しない」などの否定的な意味を持つ副詞も否定語とみなし、付加疑問では肯定の形になります。
【ポイント】
なお、肯定・否定を「+」と「-」の記号に置き換えて覚えておくと分かりやすいでしょう。
付加疑問文を声に出して言う場合、上げ調子で言うか下げ調子で言うかによってニュアンスが変わることがあります。
上げ調子(↑)の場合には、「自分の言っていること合ってるよね?」と相手に質問として問いかけたり確認したりするニュアンスになります。
逆に下げ調子(↓)の場合には、「もう分かっていることだと思うけど、そういうことだよね?」と一応聞いて同意を求めたり念押ししたりするといったニュアンスが出ます。
もちろん、イントネーションによってあらゆる発言がこういうニュアンス、と言い切れるものではありません。
現実の会話では、話の流れや相手の口調、表情などにも留意して、どういう意図で言っているのかつかみ取るよう心掛けることが大切です。
日本人学習者にとってややこしいのが否定の付加疑問文の答え方です。
たとえば日本語で「あなたは田中さんではありませんよね?」と聞かれたとして、「はい」と答えると「はい、私は田中ではありません」という意味になります。
ところが英語で Yes と答えると「いいえ、私は田中です」と真逆の意味になってしまうのです。
英文で確認してみましょう。
「あなたは田中さんですよね?」
「はい(私は田中です)」
「いいえ(私は田中ではありません)」
「あなたは田中さんではありませんよね?」
「いいえ(私は田中です)」
「はい(私は田中ではありません)」
肯定の付加疑問文の場合には、日本語と同様に Yes と答えれば「はい(私は田中です)」の意味になります。
ところが否定の付加疑問文では Yes と No で日本語の「はい」と「いいえ」が逆になっていますね。
これは、日本語の「はい」は「あなたが言っていることは正しい」、「いいえ」は「あなたが言っていることは正しくない」という意味を表しているためです。
一方、英語の Yes・No は「文の意味が肯定・否定である」ことをそれぞれ意味します。
そのためいずれのパターンでも、Yes は「私は田中である」という肯定の意味を、No は「私は田中ではない」という否定の意味を表すことになるのです。
英語では、Yes と言えばとにかく肯定、No と言えばとにかく否定の意味になると覚えておきましょう。
慣れないうちはややこしく感じるかもしれませんが、慣れてしまえば案外わかりやすいと思えるはずです。
ちなみに、ネイティブにとっても多少ややこしいと感じることもあり、Yeah などの中途半端な返答や口ぶりが「え、どっちなの?」とあいまいさを生んでしまうこともあります。
互いに誤解してしまわないように、Yes と No をしっかりと区別し、場合によっては Yes, I am./No, I am not. などとハッキリ言ってしまってもよいでしょう。
ではここから、その他のいろいろな付加疑問文のパターンを見ていきましょう。
Let’s を使った文を付加疑問文にする場合、shall we? を付けます。
「休憩しましょうか」
なお、Let’s の文以外にも shall I を付けることで控えめな提案や意志を表すことができます。
「私がご案内しましょうか?」
肯定の命令文の場合には、will you?/would you?/can you? などを付けます。
「~しなさい」よりも「~してくれるかな?」という柔らかい印象になります。
「ドアを閉めてもらえる?」
また、行為が実現するかどうかが不確定である命令文は、肯定とも否定ともとらえず、won’t you? や can’t you などを付けることもできます。
「窓を開けてもらえますか?」
won’t/can’t you? の方がやや控えめで丁寧な印象です。
一方、「~するな」という否定の命令文の場合は、付加疑問には will you のみが使われます。
「私に向かって叫ばないでもらえる?」
なお、命令文における主語は、その行為者となるべき人物が目の前の相手であることが想定されるため、常に you となります。
「このあたりに郵便局はありませんよね?」
「~があります」を意味するThere構文では、存在が示される人や物(この場合 a post office)が主語なのではないかと言われそうですが、文頭のThereを形式的な主語とみなしてこれを付加疑問に使います。
something や everybody など、-thing や -body の形をとる代名詞を複合不定代名詞と呼びます。
something/nothing/everything の場合、付加疑問では代名詞 it で受けます。
「何も間違っていないよね?」
somebody(someone)/nobody(no one)/everybody(everyone) の場合、付加疑問では代名詞 they で受けます。
「何が起こったのか誰も知りませんよね?」
somebody、nobody、everybody は文法的には単数扱いします(そのため述語動詞がbe動詞の場合は is/was となり、現在時制の一般動詞の場合には三単現のsが付きます)が、付加疑問では they で受けるため、これにつられてbe動詞や助動詞が are や do など複数の主語に対応したものになることに注意してください。
be動詞や助動詞の否定形では、isn’t や doesn’t のように短縮形を普通は使うと述べましたが、短縮しないこともあります。
「彼はいい人ですよね?」
短縮しない場合、このように代名詞が間に入って not が後ろに置かれます。
ただしこの表現はフォーマルで硬い印象があり、日常的にはあまり使われません。
I am を用いた文の場合、付加疑問は aren’t I になります。
「僕だんだん上手くなってるでしょ?」
これは発音上の問題から amn’t という言い方が存在しないため、代わりに aren’t を用いていると理解して差し支えないでしょう。
ただ aren’t I は口語では広く認められているものの、短縮せずに am I not と言うのが正式でフォーマルな印象を与えます。
他にも ain’t I という表現もありますが、ain’t はもともと黒人英語から生まれたスラング(am not、is not、are not、have not などの短縮形として使われる)で、歴史的に、教養に欠け、品がなく粗野というイメージで解釈されることの多い表現です。
最近はヒップホップやR&Bなどのブラックミュージックに由来する音楽などの影響もあり、特に若者の間ではくだけたクールな英語として普通に日常で使われることも少なくありません。
ですが、一般の学習者のみなさんは ain’t の使用は避けておいた方が無難でしょう。映画などでもよく耳にするのでとりあえずご紹介させていただきました。
ちなみに、メインの文が I am not ~ の否定文の場合、付加疑問は am I? です。
「僕は君のこと困らせてないよね?」
「~ですよね?」と尋ねたり確認したりするのに使える文法は付加疑問文に限りません。
「君はアメリカ出身だよね?」
このように right?「正しい?」と一言付け加えることも日常会話では非常によくあります。
他にも例えば数学の問題を解いて、
「答えは『24』です。合っていますか?/私は正しいですか?」
のように尋ねて確認することもできます。
いろいろな英語表現を覚えて活用できるようになるといいですね。
いかがだったでしょうか。
付加疑問文は一般に中学校で学習する文法です。
学習項目上はそれほど重大な文法とはみなされないため、その作り方や使い方をすっかり忘れてしまったという人も多いかもしれません。
ですが付加疑問文は、ちょっとしたことを確認したり、断定的な言い方を避けて相手とほどよい距離感でコミュニケーションを取ったりするのに絶妙な役割を果たしてくれるため、日常的にとても多用される重要表現です。
サラリと使いこなすことができれば、英語使用にこなれた人という好印象を与えることもあるかもしれません。
ぜひたくさん練習して、日ごろから付加疑問文を自然に使える英語話者を目指してみてください。