以前の記事「“talk to” と “talk with” の違いって? 前置詞の微妙なニュアンスまで正しく理解しよう」に引き続き、今回も前置詞の微妙なニュアンスを解説します。
英語のレベルが上がってくると自分が正しく前置詞を使えているのかが気になってきます。前置詞が違うだけで意味が微妙に、またはまったく変わることがあることに気づくからです。
例えば「~について考える」という意味の“think about”と“think of”にはどのような違いがあるのでしょうか。前置詞がもたらす意味の違いについて学んでみましょう。
“think of/about”の違い
どちらも「~について考える」という意味ですが、これらは人を対象に使う場合、相手との距離感によって使い分ける必要があります。
- A:I am thinking of you.
- B:I am thinking about you.
Aは、恋人や配偶者など親しい関係性の人が「あなたのことを考えている」と愛情を表現して使う言葉です。
Bは、「あなたとあなたを取り巻く環境について考えている」とAに比べて広い意味で使われる言葉です。
“think of〇〇” は◯◯についてだけ考える、“think about ◯◯” は◯◯を含めたさまざまな事柄を考えると解釈できます。
- I have been thinking of you since that day we went out for a date.
「デートをして以来ずっとあなたのことを考えています」 - I have been thinking about your situation recently. I think you should quit your job.
「最近あなたのことについて考えています。あなたは仕事をやめるべきです」
work at/for/in/onの違い
「~で働いている」という意味ですが、後に来る言葉が会社なのか、部署なのか、場所なのかなどによって使い分けます。
work at
会社名を出してそこで働いていると言いたいときに使える最も一般的な表現です。
- I work at ABC Company.
「ABCカンパニーで働いています」
work for
会社名を入れることもできますが、他にも上司の元で働いているという意味でも使えます。雇用関係にあるというニュアンスがあります。
- I work for Mr.Brown who is the vice president of ABC Company.
「ABCカンパニーの副社長であるブラウン氏の下で働いています」
work in
室内にあたるような場所や会社の中のある部門で働いていることを表現します。
- I work in a hospital as a doctor.
「病院で医師として働いています」 - I work in the personnel department of ABC Company.
「ABCカンパニーの人事部で働いています」
work on
建物以外の場所で働いているという意味と、特定のプロジェクトなどに従事しているという意味があります。
- I work on a farm.
「農場で働いています」 - I’m working on a new product development project.
「新製品開発プロジェクトで働いています(に携わっています)」(この用法では現在進行形が使われる)
compare A to/with Bの違い
「AとBを比較する」という用法においてはこれらの違いはほぼないと言われています。
- Compared to/with the Earth, the moon is small.
「地球と比較して月は小さい」
ただし、compareには「比較する」以外に「なぞらえる、例える」という意味もあり、その用法においては “to” が使用されます。
- I compared her smile to a sunflower.
「私は彼女の笑顔をひまわりに例えた」
run into/acrossの違い
run into/acrossには「~に出くわす」という意味があります。これらは出くわした対象が人か物かで使い分けられます。
run into
「人」に偶然出会う場合に用いられることが多いです。他にも「ぶつかる」という意味があります。
- I ran into Kate on the way to the library.
「図書館に行く途中にケイトに出くわした」
run across
「物」を偶然見つけた場合に用いられることが多いです。他にも「走って横断する」という意味があります。
- I ran across a 500 yen coin when I was cleaning my room.
「部屋を掃除していたときに偶然五百円玉を見つけた」
be concerned for/about/with
“concern” は使い方が難しい単語です。「心配する」という文脈でよく使用されますが、より一般的な “worry” が個人的な問題に対しての気持ちを表すのに対し、“concern” は、まわりの物事について心配する気持ちを表します。そのため「心配する」だけではなく「関心を持つ」というニュアンスがあり、さらに「関係している」という意味も有します。
be concerned for/about
「~を心配(懸念)する」という意味になります。“for/about” の違いは、“for” がより限定された対象を心配(懸念)しているのに対し、“about” はより広い対象を心配(懸念)しています。
- The parents are concerned for their children’s welfare
「親は子どもの健康を心配するものだ」 - I’m concerned about social issues such as aging population and low birth rates.
「私は少子高齢化社会といった社会問題を懸念している」
be concerned with
「〇〇に関心がある」「〇〇と関係している」という意味になります。
- The student is concerned with the future of artificial intelligence.
「その学生は人工知能の将来に関心がある」
be tired from/ofの違い
「疲れる」という意味が一般的な “tired” ですが、後に続く前置詞が “from” か “of” かによって微妙に意味が変わってしまいます。
be tired from
- I am tired from reading.
「読書をして疲れた」
「疲れる」という一般的な使い方で読書によって疲労感を感じていることを表しています。
be tired of
- I am tired of reading this book.
「読書をするのに飽きた」
こちらは疲労ではなく「飽きた、うんざりした」ということを表しています。
どこが違うのかというと、例えば読書をやめたとしても、“be tired from” の場合は疲れているままです。一方で “be tired of” の場合は読書にうんざりしているわけで、読書をやめれば倦怠感や退屈は解消されるといえます。
on/over/aboveの違い
「~の上に」という意味の前置詞ですが、それぞれ対象との接触関係や空間的関係において違いがあります。
- on:~の上(対象と接している)
- over:~の上(対象と接していない、対象を覆う、対象にまたがる)
- above:~よりも上(対象と接していない)
上下ではなく接触を示唆する “on”
- There is a clock on the table.
「テーブルの上に時計がある」
テーブルと時計は接しているため “on” が用いられます。
- Look at the picture on the wall.
「壁の絵を見て」
絵と壁は接触しています。この例文から “on” は上下の関係性よりも接触している関係性を示唆しているがわかります。
空間を横断するイメージの “over”
- A bird is flying over the sea.
「鳥が海の上を飛んでいる」
鳥が海の上を越えるように飛んでいくイメージを示唆します。
- There is a bridge over the river.
「川の上に橋がある」
川の端から端を横断するように橋が存在しているイメージを示唆します。
高低の位置関係を表す “above”
- A bird is flying above the sea.
「鳥が海の上を飛んでいる」
こちらも文法的に問題はありませんが、“over” の文章と違い、海の上を越えていくイメージはなく、単純に海の上で鳥が飛んでいるイメージを持ちます。
- The sun is still above the horizon.
「太陽はまだ地平線の上にある」
“The sun is on the horizon.”「太陽は地平線に達している(接している)」と比較すると、その空間的なイメージの違いがわかります。
under/belowの違い
「~の下に」というという意味ですがそれぞれニュアンスは異なります。
真下にある、覆われるイメージの “under”
- There is a river under the bridge.
「橋の下に川がある」
ある基準よりも下のほうにある、覆われるイメージはない “below”
- The Sun sank below the horizon.
「太陽は地平線の下に沈んだ」
underはoverの反意語であり、belowはaboveの反意語になります。
場所や位置的関係から派生して、影響下にあること、または上下関係を表現することもできます。
- The employee is under The president. (社員は社長の支配下にある)
- The employee is below The president. (社員は社長より地位が低い)
クイズ!どの前置詞が入る?
以下の例文の()内にどの前置詞が入るか選択しから選んでみましょう。
- 1.My boss always thinks( ) his people.[of/about][of/about]
• 「私の上司はいつも部下のことを考えている」 - 2.He works( )ABC Corporation.[at/for/in/on]
「彼はABCコーポレーションで働いている」 - 3.I ran( )a friend of mine on the street.[into/across]
「私は路上で友達に出くわした」 - 4.The politician is concerned ( )food issues of Japan.[for/about/with]
「その政治家は食料問題に関心がある」 - 5.The plane flew( )me.[on/over/above]
「飛行機が私の上を飛んでいった」 - 6.The cat is( )the table.[under/below]
「猫はテーブルの下にいる」 - 7.Every student is tired( )the principal's long speech.[from/of]
「生徒はみな校長の長い話にうんざりしている」
答え
- 1.about
- 2.atまたはfor
- 3.into(acrossでも間違いではないがintoの方が一般的)
- 4.with
- 5.over(aboveでも文法的に間違いではないが、飛んでいくイメージはover)
- 6.under
- 7.of
まとめ
前置詞を理解するためにはそのコアイメージを学ぶことが重要です。抽象的でわかりにくいかもしれませんが、例文に多く触れることでそのイメージを頭に定着させることができます。今回の記事のように前置詞を変えることで意味が変わる文章を比較すると、特に効果的です。前置詞に強くなれば英語の理解はさらに深まりますよ!