まいるす・ゑびす
(更新)
英語学習だけでなく、どの言語を勉強するにしても避けては通れないのが「単語を覚える」という地味な行為です。「この行為について思いを巡らせるだけで、本当に英語が嫌になる」なんて方も多いのではないでしょうか。
そして努力家のあなたは、ボキャブラリー不足を補うために「TOEIC800点攻略のための単語集」とかを買って、それを電車の中で読んでいることでしょう。
実際に僕も電車の中でそういう人たちを見かけることがあるので(この手の本は作るのにさほど労力がかかっていない割には、よく売れているのではないかと思うのですが)、こういう本を読んでボキャブラリー不足を解消しようとするのは正直言って最も効率が悪く、英語が上達しない覚え方です。
確かに日本の学歴社会の中で行儀よく生きていこうとするのであれば、この手の
などと書いてある本の内容を端から暗記していくというつまらない作業も、まずは受験という難関をくぐり抜けるために必要であり、いずれ始まる長いサラリーマン生活をうまく生き抜くためにも重要なスキルであると割り切ることができるのかもしれません。
ただし英語を学習し、そして習得し、それを使って何かを成し遂げようというゴールをお持ちの方にとっては、それほど効率的な覚え方ではないのです。
そこで今回は、実際に英語を使えるようになるための英単語の覚え方をご紹介いたします。
では、どうすれば良いのでしょうか。
たしかに英単語というものは、ある程度まではどうしても暗記に頼らざるを得ない場合もあります。“you”とか“we”とか“me”とか“his”とか“that”とか、その辺りの基本的な英単語を知らない人であれば、地味だとかなんだとかはもう言ってないで暗記してもらうしかありません。
ただ、中学英語くらいの語彙力がある方であれば、そこからどれだけ語彙力を伸ばせるかどうかは勉強の仕方一つで変わってきます。
一説によると日常会話レベルで使用される英単語数は3,000語くらいなのだそうです。これは逆算すると、一日一つの単語を覚えていけば10年足らずで習得できるくらいの単語数です。
しかも、どんなに英語を勉強したことがない日本人でも、およそ700語くらいの英単語を少なくとも知っているそうなので、日常会話レベルで必要な単語はあと2,300語くらいになります。
一日に100個の単語を暗記できる人であれば、1ヶ月足らずで覚えられる数なのです。
しかし3,000単語を覚えたところで、言葉というのは暗記したからと言ってすぐに使いこなせるわけではないんですよね。
一日100個の英単語を丸暗記したところで、その単語を使ったことがない状態であれば、それはただの知識であり、あなたの経験ではありません。
知識は知識で大切ですが、会話の基本は経験です。経験に裏付けられていない英語の知識というのは受験英語以外の場面ではあまり意味を持たないのです。
経験というのは、覚えた単語を会話で実際に使ってみて、通じたり通じなかったりすることであり、その単語を新聞で見かけて、「ああ、これは政治の話によく使われる単語なのかな」という印象を持ったり、テレビでその単語を聞いて、「おお、こないだ覚えたあの単語がついにおれにも聞き取れた」と感動したりすることです。
単語帳を持って暗記しているだけでは、それは生きた情報とは言えませんし、どうやって活用されているのかを知って初めてその英単語との「ふれあい」が生まれたと言えるでしょう。
何度も繰り返し単語帳を眺めていれば、字面と意味が一致してくるようにはなるかと思いますし、最近では記憶するためのスマホアプリなども数多く出回っています。
ただ、「どんな場面でその英単語を使うべきなのか」や「どんな場面でその英単語が我々の人生を豊かにしてくれるのか」というのは、そこからはなかなか見えてきません。
バッチ処理で一括暗記しようとする時にはついつい忘れがちですが、一つひとつの単語というのは、あなたの人生を変えてしまうかもしれないくらいの意味を持っているのです。
好きな言葉の一つくらい誰しもあると思いますが、それが一つの単語だったりする場合もあるわけで、そうなってくると単語の勉強というのはただの暗記ではなく、自分の人生をより豊かに、よりカラフルにしてくれるかもしれないポテンシャルを抱いているものなのです。
ぼくの好きな英単語で
という単語があるのですが、実生活ではどちらかと言うと「むっちゃウケる、それ!」的な意味合いで使われる、とてもカジュアルな単語です。 “funny”よりももっと「周りのことも気にかけられないくらい面白くてガハハと若干下品に笑ってしまったぜ、チキショー」というニュアンスが含まれる、とても憎めない単語であります。
それでは、どうやって単語の使い方までを覚えていけば良いのか、この“hilarious”という単語で見ていきましょう。
まず単語だけでなく、その単語を使ったコンプリートセンテンスを一つ用意します。コンプリートセンテンスというのは、要するにそれだけで完結している一つの文のことを指します。例えば、“hilarious”という単語は
というフレーズでよく使われます。
「いや、それまじでめっちゃオモロいねんけど。」と言いながら笑いが止まらないというイメージのフレーズになります。
コンプリートセンテンスを用意できないよという方は、Twitterでその単語を検索してみてください。ネイティブの人たちがどう使っているかが分かるでしょう。
次に、この文章を使うにふさわしいシチュエーションを考えます。
例えば、「ハングオーバー」という映画がありますが、この作品はコメディに分類される作品であり、見ておもしろがるために作られていますよね。
なので、あなたがあの映画を見て爆笑したとして、誰かに、
と聞かれたとしましょう。そういう絶好の場面であのフレーズを解き放つのです。
という塩梅です。
そしてさらに会話のシミュレーションを続け、“Have you?”と相手にも聞いてあげることにしましょう。
相手の反応は何パターンか想定できます。とりあえず3パターンほど考えると、
こんな感じになるかと思います。ここまでの会話の流れをまとめると
という感じになります。
“hilarious”という単語をハングオーバーという映画の面白さに紐付けたり、実在しない人物との架空の会話をシミュレーションすることにより、グッと覚えやすくなったような気はしないでしょうか?
この会話の相手がちょっと気になっている異性だったりした場合には
なんて言う展開も“hilarious”が取りもつ縁かもしれません。
話が若干それましたが、基本的に何かを暗記する時にするべきは効率化ではありません。逆にそれに関連する情報をできるだけ増やして、そのストーリーと共に自分の脳に印象づける覚え方のほうが、たとえ遠回りのように思えても効果的なのです。
しかも、この会話シミュレーションを一度やっておけば、そっくりそのまま会話で使えるメリットもあります。
英語を勉強している時期においては、「覚えた単語を使いたいがために、特定の話題を出してみる」というのは非常に大切。そして会話の流れで自分が3回以上使った単語はなかなか忘れないものなのです。
単語帳を使った覚え方を決して否定しているわけではないですが、単語帳に載っている単語を使って会話の流れを一つひとつ書き出してみると、もう少し社交的な文脈で切り抜けることができたりします。
TOEICの点数をただただ伸ばすのであれば、ガリガリ覚えればいいと思いますが、もし「英語を使うことによってより楽しい時間を過ごしてみたい」とあなたが思っているのであれば、ただ覚えるのではなく、それぞれの単語を使った会話シミュレーションをぜひ試してみてください。
これもなかなか地味な作業ではありますが、語彙力だけでなく、文章作成能力、ストーリーテリング、会話能力など、英語学習には欠かせない他の栄養素もたくさん入っているのでオススメです。
"That was hilarious!" と一日も早く会話で使えるよう、一つひとつ覚えていきましょう!