不朽の名作から世界的ベストセラーまで|夏に読みたい英文学12選
酷暑が加速しそうな2023年夏。熱気を共有しながら楽しめる、あるいは、クールダウンのおともにしたい英書を厳選しました。
ほとんどは邦訳されており、映画化されている作品もあるので、タイトルになじみのある人も多いかと思います。
英書を読むのは初めて、あるいは、途中で挫折した経験があって自信がない......という人には、今回紹介しているロアルド・ダールの「Matilda(マチルダ)」やトーベ・ヤンソンの「The Summer Book」などの児童文学から入ってみてはいかがでしょうか(私も初めて完読した英書はダールの作品でした)。
また、リストには入っていませんが、「Harry Potter」ファンなら、同シリーズの読破の挑戦もおすすめ。映画では描ききれなかったディテールに「なるほど、そうだったのか!」と、ページをめくる指が止まらなくなるはずです。
DVDやオーディオブックを併用して、「英語の情景」をインプットしよう
秀逸な文章は想像力を刺激し、美しい映像は情緒と台詞を忘れがたいものにします。
たとえば、芥川龍之介の「羅生門」。時は平安時代、「或日の暮方の事である。一人の下人が、羅生門の下で雨やみを待っていた。広い門の下には、この男のほかに誰もいない」で始まる、日本人なら学生時代に触れたことがある作品です。
さて、この書き出しを目で追いながら、降りしきる雨の中、荘厳な大門の下でぽつねんと雨宿りをする、粗末な装いの男性が脳裏に浮かびませんでしたか? 大粒の雨が地面を叩く音も聞こえてきたかもしれませんね。そんな情景とともに、この書き出しを記憶している人もいるかと思います。
これは、私たちの中に日本の歴史と文化への理解、そして映画やテレビなど映像による記憶がベースにあるからこその相乗効果。そして、英文学を読む際にも、映像化されている作品があれば、それを先に観ておくのも、時代背景や舞台設定が把握でき、原作をより深く理解する手助けになります。
また、「聴く読書」と呼ばれるオーディオブックもおすすめです。アメリカの情報科学技術協会が2019年に発表した視覚と聴覚の読解効果に関する比較実験によると、音声を聴きながら文字を読むと、読解効果が高いことが証明されています。
つまり、オーディオブックを聴きながら同じ本を読むと想像力を刺激し、また、繰り返し同じ単語やフレーズを聴くとこで、学習効果もアップするわけです。気に入った本があれば、ぜひ試してみてください。
夏に読みたい英文学:Modern Reads|現代文学
The Vacationers - Emma Straub
N.Yマンハッタンの喧騒を逃れ、2週間の予定でスペインのマヨルカ島を訪れたポスト一家とその友人たち。最高の休暇になるはずが、秘密発覚やマウンティング合戦、古傷の蒸し返し....と最悪の事態に。楽園で人生の修羅場を迎えた一行の姿を、リアルかつ軽妙、ユーモアたっぷりに描いています。
Call Me by Your Name - André Aciman
邦題「君の名前で僕を呼んで」。17歳の青年エリオと冷淡な研究者のオリヴァー。互いに惹かれつつもすれ違う、甘く切ないひと夏の恋を描くラブストーリーです。
2018年に映画化され話題になりました。「映画を見る前に読むべきか、映画を見てから原作を読むのか、どちらがいいのか誰にも分からない」とは、本作品でアカデミー賞脚色賞を受賞したジェームズ・アイヴォリーの弁。
The Beach - Alex Garland
邦題「ビーチ」。主人公はベトナム戦争に憧れる22歳の英国人、リチャード。タイのホテルで伝説の楽園「ビーチ」への地図を手に入れ、未開の孤島を目指すが....。
「新世代バックパッカー小説の最高傑作」と称された1998年のベストセラー小説です。100本以上のオファーを蹴って、レオナルド・ディカプリオが出演を決めたという映画版もおすすめ。
The Hitchhiker’s Guide to the Galaxy - Douglas Adams
邦題「銀河ヒッチハイク・ガイド」。銀河バイパス建設のため、ある日突然、地球が消滅。人類最後の生き残りとなった英国人アーサー・デントは、たまたま地球に居た宇宙人・フォードと”宇宙ヒッチハイク”をすることに...。
1987年に英BBCのラジオドラマとして誕生。同脚本を小説化し、伝説的ベストセラーとなったナンセンスSFコメディの傑作です。5部完結。シンプルな英語で読みやすく、ダラッと過ごしたい夏の日の読書にぴったり!
Where the Crawdads Sing - Delia Owens
邦題「ザリガニの鳴くところ」。動物学者でもある筆者の世界的ベストセラーとなったミステリー小説です。
ノースカロライナ州の湿地を舞台に、湿地の小屋でひとりで暮らす少女の物語と、彼女と関わりのあった裕福な青年の不審死事件というふたつの時間軸で物語は進行し、やがて意外な結末へと加速する読み応えのある作品。
湿地保全活動を行う筆者ならではのビビッドな描写が想像力をかき立てます。
夏に読みたい英文学:Classic Reads|古典&不朽の名作
A Midsummer Night’s Dream - William Shakespeare
邦題「真夏の夜の夢」。妖精の魔法が引き起こす恋愛騒動を面白おかしく描いたラブコメディで、シェイクスピア初心者にもおすすめ。
シェイクスピアと聞くと「難しそう」と思うかもしれませんが、題材は権力闘争、恋愛悲劇、コメディと内容は非常にシンプルで、いわゆるShakespearean Englishも、注釈付きの本を選べば読み解くのはそう難しくありませんし、現代に生きる英語彙の多くはシェイクスピアの造語とも言われ、豊かな英語表現の学習にも役立ちます。たとえば「bed room」という単語は本書が初出しとか。
まずは映画版で情景を予習しておくと、いっそう楽しめます。
Pride and Prejudice - Jane Austen
邦題「高慢と偏見」。18世紀末〜19世紀初頭の英国女性の結婚事情を背景に、誤解と偏見から起こる恋のすれ違いを描いたジェイン・オースティンの長編恋愛小説。きめ細やかな人物描写と軽妙なストーリーで、オースティン作品の傑作とされています。
To Kill a Mockingbird - Harper Lee
邦題「アラバマ物語」。1930年代、アメリカ南部を舞台に人種差別に立ち向かう白人弁護士の姿を描いたハーパー・リーの自伝的小説で、ピュリッツァー賞を受賞しています。
「To Kill a Mockingbird」は直訳すると「マネシツグミを殺すこと」。無害な存在に対する無慈悲な行為は罪であるということを意味します。100年近く経った今もくすぶり続けるアメリカの人種差別。その長い闘いの歴史に関心がある人におすすめです。
Matilda - Roald Dahl
邦題「マチルダ」。児童文学の達士・ロアルド・ダールの「チャーリーとチョコレート工場」と並ぶ代表作である本作は、頭脳明晰で読書が大好きな少女マチルダが、理不尽かつ横暴な学校長に知恵で挑む痛快しっぺ返し物語です。かつて子供だった大人たちもワクワクすること間違いなし!
夏に読みたい英文学:Non-fiction Reads|ノンフィクション
A Walk in the Woods - Bill Bryson
アメリカ東側に位置する全長約3500kmのアパラチアン・トレイル。無謀にもその踏破を思い立った60代の悪友ふたりの珍道中をユーモラスたっぷりに綴ったビル・ブライソンのベストセラー旅行記。
大自然の脅威と体力の衰えに打ちのめされながらも、深刻な環境破壊の現実を体感し、自らの人生を顧みる時間を得て変化していく、ふたりの”心の旅”を描いています。
Into the Wild - Jon Krakauer
1992年夏、アラスカの森林に放置されたバスの中で発見された青年の遺体。死因は餓死。裕福な家庭で育った彼が、なぜアラスカの荒野で悲壮な最期を遂げねばならなかったのか。
自らもアラスカ南西部を放浪した経験をもつ著者のクラックヮーは、徹底した取材をもとに、青年の心の軌跡をていねいにたどり、自身の深い洞察も交えて重厚なノンフィクションに仕上げています。
The Summer Book - Tove Jansson
フィンランド多島海にある小さな孤島で、6歳の少女ソフィアと彼女の祖母が過ごす夏を綴った短編集。
「ムーミン」の作者として知られるトーベ・ヤンソンが、自身の姪であるソフィアをモデルに、共感はするが妥協せず、お互いの無愛想や気まぐれに順応しながら、さりげなく思いやり、静寂と孤独をともに楽しむふたりをさらりとしたユーモアで描いています。
カテゴリーは児童書なので読みやすく、心にやわらかい余韻が残る秀作です。
洋書で暑い夏を乗り切ろう!
連日の最高気温記録更新に、今年の夏休みはインドアでひんやりと…と考える人も少なくないはず。
ぜひ、お気に入りの本を片手に、想像力と英語力を刺激するアツき脳内時間を楽しみましょう!