後藤知子さんインタビュー

「音楽家が音符の感覚を身につけるように英語もそう感じて欲しい」後藤知子さんインタビュー

2016-08-12
マルタ共和国在住のフォトグラファー&通訳という一風変わったバックグラウンドをもったアンカーの後藤知子さん、 その英語にまつわる経歴や今留学先として注目を集めるマルタの魅力などについて伺いました。

国内で、そして国外で英語を学ぶマインドについて大切なことをたくさん教えていただきました。 留学を考えている方、しっかり英語の力をつけたいという方必見のインタビューです!

現役通訳の先生から英語のイロハを教わった小学校時代

─ セレン

本日はどうぞよろしくお願いします。

─ 後藤

こちらこそ、よろしくお願いします。

─ セレン

まず後藤さんご自身のプロフィール的な部分なんですが、フォトグラファーとしてもご活躍ということで、 英語のお仕事されている方には珍しいなあと。

─ 後藤

今の活動としては英語関連と写真家としての活動が半々くらいでしょうか。 マルタに住んで5年経ちましたが、その前はカナダで社内通訳をしていました。

写真に目覚めたのはマルタに来てからなんです。現在フリーランスでフォトグラファーをやっています。 英語に関しては、通訳や観光の英語アテンド、オンライン上でできる翻訳などをしています。

─ セレン

面白いバランスでお仕事をされているなあ、という印象でかつマルタで、というところが珍しいなと。

─ 後藤

海外ではトラベルフォトを中心に撮影していますが、マルタではイベント写真やウエディング、ストリートフォトなども撮ってます。 デジタルもフィルムも両方使っています。

─ セレン

後藤さん自身の英語のバックグラウンドを教えていただけますか?

─ 後藤

まず、10歳頃にとてもいい英語の先生に出会ったんです。
両親の高校時代の同級生なのですが通訳をされていてその方に教わることになったんです。
バリバリ現役で、イギリス英語ベースのプロの通訳者でした。
私にとってはとても刺激的で、単純にいつもその先生のようになりたいって思ってたんです。

─ セレン

非常にレベルの高い憧れですよね。

─ 後藤

そうですよね、でも子供の時だったのでシンプルに深く考えずに憧れちゃってましたね。

「英会話とは何なのか」という基本的な心構えみたいなものをその先生が教えてくださったので、 学校の授業もイヤイヤ受けるとかではなく、 何の為に学ぶのかというのをちゃんと納得した上で授業を受けていたような気がします。

英語ができるのは大前提、英語を使って何ができるかが大事

─ セレン

その先生が後藤さんの人生をかなり決定付けた感じですね。

─ 後藤

はい、英語だけはやろうって。そこだけは生涯ブレていません。
ただ当時は英語ができさえすればなんとでもなる、と思っていたんですが、
後でそれではどうにもならないと気づくことになるんです。

─ セレン

そうですよね、一定のレベルを超えたらそこは英語なんかできて当たり前、という世界ですもんね。
その壁にはいつ頃ぶち当たったんでしょうか?

─ 後藤

カナダの大学に留学をしたんですが、
英語をやらざるを得ない状況に自分を追い込んだんです。
行けば英語ができるようになるなんてもちろん思っていませんでしたが、
現地のネイティブスピーカーと対等にやりあうためには自分は全然不十分だったと思い知らされました。

─ セレン

留学時の後藤さんの英語レベルってどのくらいだったんですか?

─ 後藤

うーん、全然でしたよ…。
高卒で短期大学で英語を専攻して英会話のクラスにも通いました。
それでTOEFLがカナダの大学に入学できるレベルではありませんでした…

カナダに留学してからも語学学校に通う必要がありましたから。

─ セレン

英語ではそうすると苦労した感じですか?
今の後藤さんからは想像もできませんが。

─ 後藤

いやー、苦労はしましたよ。
うん、苦労しました(笑)

まず読む量がとても多いんです。エッセイを一つ書くのに10冊以上の本を読むとか、そういうレベルなので。

講義も容赦ないスピードで進むので、ノートを取りながら聞くというということ自体がとても大変でした。

後で友達からノートを借りたり、一緒に勉強したりもしました。

─ セレン

その中で気づいた一番大事なことって何ですか?

─ 後藤

書くこと、ですね。
書くことの大切さは本当に痛感しました。

書いても誰もチェックしてくれないので多くの人は書かないんですよね。
ただ書いてみると、自分のわからないことが一目瞭然になるんです。
会話上では間違いなんかみんなスルーするんですが
書くとなると一字一句間違いがはっきりするので、
自分は書くことで一番伸びたかなあと。

留学したからと言って英語が勝手に伸びるわけではない

─ セレン

そんな留学経験を経て帰ってきた日本ではいかがでしたか?

─ 後藤

なかなか順調にはいきませんでしたね…

英語ができる人なんで五万といるわけで、 「英語ができます」で就職しようとしても全然ダメだったんです。

だからなんなの?という感じで…

やはり英語ができるのは大前提で、それを使って自分は何ができるか、 という部分が必要でした。

─ セレン

実際にその壁にぶち当たって、
後藤さんはどのようにその壁を打破したのでしょうか?

─ 後藤

どういう仕事をしたいのか、がやはり大事になってくると思います。
お話ししたように小さい頃から通訳という夢があったので、そこは目指しましたね。

ただ通訳といっても英語を日本語にただ変換できればいいのかというとそういうわけではなく、 文化や習慣、時事など、クライアントの国のバックグラウンドを認識していることが大切です。

クライアントとの接し方や通訳のテクニック等も学びました。 帰国後、留学カウンセラーの仕事も少ししたりしていました。

「留学したからと言って英語が勝手に伸びるわけではない」ということと
「日本人同士で固まってしまって英語を使う機会を失ってしまわないように」ということを主にお伝えしていました。

─ セレン

今、後藤さんは海外留学だけでなく海外就職に関しても
いろいろ情報発信されているイメージがあるのですが、
その辺もやはりなにか伝えたいメッセージというものがあるのでしょうか?

─ 後藤

そうですね、今はマルタに住んでいるんですが
日本人の学生さんに会うと海外就職の相談をされることが多くて。

ビザの問題などがやはり多いですよね。
職種や国によって違うのでアドバイスするのが難しいのですが、
なんだかんだで人伝いで仕事を見つけている方が多いです。

─ セレン

海外で働く時の英語のレベルに関してもよく聞かれませんか?

─ 後藤

はい、よく聞かれます。
必要な語学レベルに関して言うと、分野によってバラバラだと思います。
例えば英語圏の企業に日本から出向する場合でも
現地の人はその日本人がもつ技術を学びたいから
必死で聞いて理解しようとするんです。

分野が専門的になればなるほど英語という部分では楽だと思います。
まずは自分が仕事をしたい分野で語彙力、表現力があれば仕事はできると思います。

─ セレン

海外で働きたいから英語が必要、と考える人が多い気がするんですが
それって結局順序が逆だということですよね。

したい仕事があって、それに英語が必要だから英語をする、と。
それが本来の仕事に必要な英語だということですよね。

─ 後藤

おっしゃる通りだと思います。

日本ではまずは自分の仕事、自分のスキルを磨くことに力を注ぐべきだと思います。

日本人だからこそ出来ることって世界に出ると本当に たくさんあると気づくんです。

それは技術とかではなく、気遣いとか思いやりとか 仕事の丁寧さとかだったりもします。

日本人は責任感をもって仕事をしてくれるから積極的に採用したいと思っている雇用主もいます。

だからさっきから言ってる技術とかって なにかものすごく特別なもの、とかではなくても、もともと日本人として 備えているきめ細やかさみたいなものですら武器になるってことなんですよね。

─ セレン

日本に戻ってからいろいろな仕事を経て、その後カナダに移り
企業内通訳としてのお仕事に就いたということなのですが、
そこでのお仕事はいかがでしたか?

─ 後藤

自動車関連の企業でしたので、
まずは専門用語をマスターするところからでしたね。

そして、いかに現地の人とうまくやるかということが
とても大事だなあと痛感しましたね。

人事の仕事にも少し関わっていたのですが、
どういう人を採用するかって、採用するポジションの技術を要していれば、
あとは他人とうまくやっていける人柄なんですよね。

英語ができるできないも大事なんですが、
コミュニケーションが取れるかどうかが大事で。

英語の文法がどうとか、そういうレベルではなく。
性格や人との接し方、基本的な人としての部分ですよね。

─ セレン

小さい頃から描いていた理想の仕事に就けたイメージなんですが
やはり楽しかったですか?

─ 後藤

はい、楽しかったです。

海外で日本との橋渡し、通訳者になりたい、とずっと思っていたので。

日本側から来た資料をカナダの現地に英語に訳して渡す
という単純な作業でも、やりがいを感じながら仕事をしていましたね。
自分が英訳したものが実際に現場で使われているのを見るのは嬉しかったです。
毎日が刺激的で学ぶものがありました。

─ セレン

そこからマルタにはどういう経緯で行くことになるのでしょうか?

─ 後藤

夫といつかヨーロッパに行きたい、という話をしていて
英語圏でかつ物価も安いところ、ということで移住することにしたんです。

マルタにはビーチもあるしっていう、結構ランダムな決め方で(笑)

─ セレン

今でこそじわじわとマルタ留学が盛り上がってきてはいますが、
後藤さんから見たマルタの魅力ってなんだと思われますか?

─ 後藤

やはり地中海ののんびりした雰囲気、治安のよさ、ビーチ、マルタ史の奥深さなどです。

語学留学に関して言うと、ヨーロッパからの学生が多い傾向にあります。 英語圏以外、例えばフランス、イタリアや、南米ではコロンビアやアルゼンチンなどからの学生も多いようです。

同じEUで且つイギリスよりも物価が安いから、という理由でよく来るようです。日本人の生徒数も他国と比較するとまだまだ少ないようなので、穴場だと思いますね。

─ セレン

マルタの英語というのは存在するんでしょうか?
アクセントだったり表現だったり。

─ 後藤

ありますよ。
マルタはもともとイギリス領だったので基本はイギリス英語です。
ただマルタ語や独特なアクセントが混じる部分があるんですね。
英語の先生でも抜けていない人がいますよ。

ただオーストラリアにはオーストラリアの英語があるように
それぞれの国にそれぞれの英語があるのは当たり前のことなので、
そう捉えると自然なことですが。

イタリア人の話す英語に近いイメージですかね、マルタの英語は。
抑揚がきついというか。

一般的に、マルタ人同士の会話はマルタ語が使われます。
よって、学校の外に出たら英語を見聞きする量というのは英語圏の留学よりはやはり減るとは思います。

長期留学という観点で見たときには少し考慮すべき点の一つかなとは思います。

マルタの一番いいところは航空の便だと思いますね。
マルタから格安の直行便でヨーロッパ内の主要都市に気軽に行けますよ。
国自体が小さいので、空港に行くのも近くて便利です。
私の家からは車でたったの5分ですから。

パリとかロンドン、ローマ、ベルリンなどへ行きやすいので
留学生の多くは週末にそういうところで過ごすんですね。

そこはとても魅力的な部分だと思います。

─ セレン

その利点は初めて聞きました。
確かに週末にヨーロッパに気軽に行ける、というのは
英語という観点を飛び越えて貴重な体験になるでしょうね。

─ 後藤

はい、その点はなかなか他の留学地ではできないかなあと。

─ セレン

まだまだマルタ留学やマルタそのものを発信している日本人って
そんなに多くはないと思いますが、後藤さんはその辺に関して
なにかビジョンみたいなものはありますか?

─ 後藤

最近テレビなんかでも取り上げられたりしてるのを見たりしますが
本当のマルタの魅力、ディープな部分までは
掘り下げられていないなあという印象です。
ネコがいっぱいいるとかは日本で知られていますけどね(笑)。

島自体は小さいんですが、多くの小さな村が密集しています。
残念なことに、観光客のほとんどは首都バレッタやセントジュリアンだけしか行かない人が多いんですが、田舎の方に行くと、 映画の「ニューシネマパラダイス」みたいな街が今もあったりするんですよ。

人もあたたかくよく歩いていると声をかけてくれます。
みんなマルタが大好きだから自慢したいんです。
「うさぎ食べにおいで」って家にまで招待してくれたりするんですよ。

音楽家が音符の感覚を身につけるように英語もそう感じて欲しい

─ セレン

今参加されている「なんてuKow?」でもアンカーとして
活躍されている後藤さんですが、なにか気をつけていることとかありますか?

なんてuKnow? 後藤さんページ
http://eikaiwa.dmm.com/uknow/anchors/goto/

─ 後藤

ほんとに面白いフォーマットですよね。面白い質問ばかりでいつも勉強になっています。
自分の中からは生まれない質問が多くて、それに答えるというのは自分の通訳の訓練にもなってるんですよね。

このフォーマットを見ると一つの日本語に一つの英語ではないんだ
というのがわかると思います。何通りも答えがあって奥が深いですよね。

褒め上手ですね、っていうのも面白くて
そもそもの話をすると英語ではあまり褒めるのがうまいことを
褒めたりはしません。
そういう部分は英語の感覚なんですよね。
日本人は感覚で英語を身につけるっていうと嫌う人が多いんですよね。
でも音楽家が音符の感覚は演奏しながら身につけるように
英語にもその要素が絶対あると思います。

ネイティブのアンカーが多いのでなかなか日本人には厳しい部分もありますが、
逆に日本人だからこそユーザーさんの悩みが理解できる部分もあると思います。

みなさんには、なんてuKnow?の解答例を見て終わりではなく、
実際に使って自分のものにしてほしいなと思います。

─ セレン

今後の展開としては後藤さんはなにかをしてきたい、という具体的なビジョンはありますか?

─ 後藤

写真と英語をうまく掛け合わせたようなものはできないかなあというイメージはあります。
マルタを発信していきたいというのもありますしね。

あとは自分のこれまでやってきたことの総まとめ的に出版なども考えています。

─ セレン

最後に英語を学ぶ人に対してメッセージをいただけますか?

─ 後藤

今回日本に帰ってきて本屋さんに行くと
英語を学ぶこと自体が目的になっている状況は少し感じたりはします。

海外でそういう外国語の学び方ってほとんどないと思うんですね。
英語を学ぶことそのものを目的にするのではなく
そこを破ってほしいなと思います。

今は良い英語を吸収できる媒体がたくさんありますよね。
オンライン英会話もそうですが、英語に触れる機会が容易に作れる
「言い訳のできない」時代です。

会話や読み書きをしながら、総合的な英語力を身につける感覚を得て欲しいなと思います。

海外留学、海外就職を目指している人は、自分の軸をしっかり作っておくことが大切です。
海外では、思わぬところで好機が待っててくれます。ぜひ一度その体験をして欲しいですね。

─ セレン

本日は貴重なお話をありがとうございました。
マルタに遊びに行った際はぜひ案内してください!(笑)

─ 後藤

いつでも大歓迎ですよ。
こちらこそ、ありがとうございました。
後藤知子
カナダの州立大学を卒業後、大手自動車メーカーでの社内通訳・翻訳、社長秘書、日本語教師などに携わる。 留学カウンセラーなどを経て、現在は写真家としても活躍中。海外在住歴20年。
「使える英語ドットコム」運営、 英語学習、海外留学、異文化コミュニケーションに関する情報を発信中。 マルタ共和国をベースに、トラベルライターの夫とヨーロッパやアフリカを中心にノマド生活実行中。
(左)後藤さんの参加されたマルタの伝統文化、建築、自然に関する写真プロジェクト。 “Vanishing Malta” (2016) - APS Bank, Malta
(右)マルタで出版された東京で撮影された写真集。 “Tokyo Lost & Found” (2015) - Ede Books, Malta

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