則岡麻里絵
(更新)
ドアの表示などで日常的に見かける動詞 “pull” 。
ドアの “pull” はもちろん「引く」という意味ですが、この動詞は実は「引く」以外にもさまざまな意味で使われています。
”pull” の異なる用法を知っておくと、日常会話を正確に理解する上で非常に役立ちます。また適切な場面で ”pull” を用いた句動詞やイディオムを使えるとこなれた印象の英語になりますので、状況に合わせて使えるようにしておくとよいでしょう。
では今回は、動詞 ”pull” のいろいろな用法を見ていきましょう。
どちらも車の運転をする方はぜひ知っておきたい表現です。
「停車する」や「路肩に停める」という表現になぜ ”pull” を使うのか疑問に思われるかもしれませんが、これは馬に乗って移動していた時代から使われている表現が現在でも使われているのだそうです。手綱を引く様子を想像すると納得できるのではないでしょうか。
“pull into” は特定の場所に停めるイメージ(アメリカでの用法)。
”pull over” は道路の端に車を寄せて停めるイメージ。
走行中に警察に止められた場合やタクシーに乗っている際に、車を路肩に寄せる様子を表してよく使われます。
直訳すると「足を引っ張る」という意味ですが、これは ”to play a joke on somebody, usually by making them believe something that is not true” 、つまり「冗談を言ってからかう」という意味で使用されます。
「からかう」に関連した表現では、以下でも ”pull” が使用されます。
“pull yourself together” の意味は “to regain one’s calmness” (落ち着きを取り戻す)。
「気を確かにする」「しっかりする」といったニュアンスです。バラバラになった自分の思考を引き寄せてまとめる様子を想像すると覚えやすいかもしれません。
こちらは訳しにくい表現かもしれません。
”pull through” は、「困難を乗り越える」「病気を乗り切る」「難局を切り抜ける」といった意味で使われています。
“pull off” には「成し遂げる」「切り抜ける」という意味があり、困難なことをやってのける様子を表して使用されます。
日常会話で聞く ”pull off” は「うまくやる」という意味でもよく使われています。
日本語に訳しづらいのですが、一般的にはあまり似合わないものが似合う様子などを表して使われることが多い表現です。
ここでの ”pull” は ”to perform” や “to carry out” (実施する・実行する)といった意味で、「徹夜」を意味する ”an all-nighter” と合わせて使われています。
留学生などで徹夜をされる方はこの表現を使う機会があるでしょう。
日本語では「筋を違える」「肉離れする」と言うので、「引く」という印象が薄いかもしれませんが、ここでの ”pull” は “to strain by stretching” (ストレッチをして痛める)という意味です。
筋肉だけでなく、腱(“tendon”)や靭帯(”ligament”)を痛めることを表しても使える表現です。引っ張って伸ばし過ぎてしまったために痛みが起こる様子を思い浮かべると分かりやすいでしょう。
知っていた用法はいくつありましたか?
今回は “pull” のさまざまな用法をご紹介させていただきましたが、一つの動詞でも使い方によって異なる意味になることがお分かりいただけたかと思います。 ”pull” に限らずこのような単語は、対訳を覚える代わりに単語の意味をイメージで捉えると有用です。
ご紹介した用法の中には慣れるまで使いにくいものもあるかもしれませんが、いずれも覚えておくと会話の中で耳にしたときに内容をぱっと理解できるのではないでしょうか。
ぜひ参考にしていただければ幸いです。
【参考】
http://www.wordcentral.com/cgi-bin/student?book=Student&va=pull
https://www.oxfordlearnersdictionaries.com/us/definition/english/pull_1