濱名 栄作
(更新)
2020年東京オリンピックの追加競技に選ばれたスポーツクライミング。
その競技において、海外選手から「ニンジャ」と呼ばれ一目置かれる日本人がいる。
楢崎智亜選手、20歳。
2016年、日本人男子として初のボルダリング世界王者に輝き、東京オリンピックでの金メダル獲得を大いに期待される若手のホープである。
そんな若くして世界のトップレベルに登りつめた楢崎選手、成長を加速させたのは一つの大きな"気づき"と、1番へのケタ違いの"執着心"であった。
ー 本日はよろしくお願いします。まずは、クライミングを始められたきっかけについて聞かせてください。
きっかけは兄の影響です。
もともとスポーツが好きで、小さい頃は器械体操をやっていたんですが、小学4年生のときにやめちゃって。何かやりたいなと思っていたときに、たまたま兄がやっていたクライミングについて行ったらすごく面白かったんです。
ー クライミングのどんなところが面白いですか?
登ってるだけで面白いですし、壁で自由に動き回れるのが何よりも楽しいですね。
ー 高校卒業してプロに転向されたということですが、その決断はいつ頃したのでしょうか?
親からは「大学に行ったほうがいい」とも言われていたので、最後までけっこう悩みましたね。
大学に行きながらというのも考えましたが、それだとダメだったときに逃げちゃうなって思ったので、最終的にはクライミングをメインにしていくことに決めました。
ー プロのクライマーってどのくらいいるんですか?
多くなくて、それだけで食べていけている人は10人いないくらいですかね。賞金は渡航費で消えるくらいの金額で、それだけでは食べていけないので、スポンサーと協会のサポートがないと、という感じです。
オリンピック競技になってからは少しずつ補助金がおり始めましたが、選手が多いのでなかなか全員に還元というわけではないんですよね。トップレベルの選手にならないとサポートがしっかりしてもらえない、というのが今の現状です。
ー そうなんですね。練習は一日どれくらいされるんですか?
4時間とか5時間とか、多いときだと8時間くらい登るときもあります。
ウエイトトレーニングはあまりせずに、自重や重心移動を使ったトレーニングが多いです。筋肉をつけ過ぎちゃうと身体が重たくなって登るときに負担が大きくなってしまうので、軽くて力強い方がいいですね。
体幹を使って上手く力を逃がしながら登ったりとか、そういうことを意識するだけで上手くなります。
ー なるほど。楢崎選手はそのプレースタイルから海外で「ニンジャ」という異名を持つようですが、登り方にこだわりがあるんですか?
海外の選手に比べて僕は身体が小さいので、しなやかさやバネを使ってうまく飛んだりしないといけないのですが、それが得意なんです。
あとそれがカッコイイと思ってずっとやってきました。
なので、ニンジャという例えはうれしいです(笑)。
ー 海外の試合に出られることも多いと思うのですが、海外の選手と積極的にコミュニケーションをとったりしますか?
できないですね(笑)。
一緒に登っている最中は、別に言葉が喋れなくても気持ちで伝わる部分もあるので何とかなるのですが、普段の会話はできないです。
以前、1ヶ月ほどドイツに練習に行ったときに、ドイツ人のコーチと英語でやりとりしましたが、僕は喋れないので言われたことを感覚でやる、という感じでした(笑)。
外国人選手同士はけっこうみんな喋っているので、僕も英語を話せるようになったら積極的に話してみたいですね。
ー ぜひ『DMM英会話』と『iKnow!』を使って英語を勉強してみてください(笑)。
ー 数々の世界大会で好成績を残されるなど、2016年が一つのターニングポイントになっているように思うのですが、トレーニング方法を変えたり、心境の変化が起こるなど、何か大きな転機があったのでしょうか?
そうですね。
トレーニングを変えたり、気持ちの面も変わりました。
それまでは予選落ちを繰り返していたので…。
トレーニングでいうと、それまでは"技術"をすごいバカにしてたんですよね(笑)。
「日本人は技術が高くてその技術で登れてる」っていうのがカッコ悪いと思っていて、「フィジカルで登れる」というのが自分にとっては魅力的だったので、そればかりを磨いていたんですけど、途中で伸びなくなってしまいました(笑)。
今考えれば当たり前のことなんですけど、そのときにやり方を見直して、より効率よく登ることを意識し始めたんです。
ー それは自分で気づいたのですか?
いえ、周りに言われ続けて気づきました(笑)。
ずっと優勝したかったので、先輩たちに「自分に何が足りないか」を聞いて回っていろいろとアドバイスをもらった中で、「予選からカッコよさを意識して予選落ちしてるよりも、予選・準決を確実に勝ち進んで決勝で自分らしさを出した方が観客の心に残るだろう」という言葉が心に響いたんです。
結局、勝つのが一番カッコいいんですよね(笑)。
それまでは勝つことよりもカッコ良さを重視していましたが、そのときに勝つためのプレースタイルに変えました。
ー なるほど。気持ちの面ではどんな変化がありましたか?
わりと最近までは、ずっとプレッシャーと戦っていた感じだったんです。
でも、今はプレッシャーを楽しめている感じがしていて、それができるようになってからプレーが安定しましたね。
ー プレッシャーを力に、ですね。緊張しているときはどのように対処しているのですか?
自分が成功していることを考えると、楽しくなってくるというか笑っちゃうじゃないですか(笑)。
ミュンヘンであったワールドカップのときは、決勝の前から優勝してインタビューされているシーンを想像しながら、「これ言おうかな」とか準備していたら優勝できました(笑)。
なのでイメージトレーニングってかなり大事で、大会前から勝つイメージができるときは勝てるし、そのイメージができないときは勝てなくて…。
今年の1月にボルダリングジャパンカップがあったんですけど、そのときは全然良いイメージができてなくて負けちゃったので、「やっぱりそうなのか」と思いましたね。
ー お話を聞いていると、自信というかグイグイくるものを感じるのですが、子供のときからそうだったのですか?
いや、昔はサッカーとかをやっていても、「悪いな」じゃないけどそういう気持ちがあって、ガツガツいけなかったので個人スポーツをやっていました。
もともと、ボルダリングでも「上に行きたい」という気持ちは持ってたんですけど、トップ選手の活躍を見ているうちに「もっとオレも評価されたい」と思うようになって。
ずっと勝てるイメージはしてて、イメージでは勝てていたんですけどね。「なんで勝てねんだろ」と思って、軌道修正して今がある感じです(笑)。
ー 軌道修正をして着実に結果を出しておられるので尊敬です。理想の自分が100としたら今の自分は何点くらいだと思いますか?
スポーツクライミングには、3種目(リード・ボルダリング・スピード)あって、ボルダリング1種目ではチャンピオンになれたんですけど、3種目でチャンピオンになりたいと思っています。
だとすると今は何点くらいなんだろ…3分の1だから33点くらい?(笑)
最終的には、誰に聞いても「あいつが一番強い」って言われるようになりたいんです。クライミングって色んなスタイルがあるので一概には言えないのですが、それでも「あいつが一番強い」って言われるようになりたいですね。
ー スポーツクライミングが日本でも少しずつポピュラーになってきていますが、楢崎選手としては今後の盛り上がりにどのように関わっていきたいですか?
引っ張っていけるような存在になれたらいいなとはすごく思いますね。
もっと競技を盛り上げて、メジャーなスポーツにしたいです。
あとは観客がもっと増えるといいなって思います。やっぱりお客さんが多い方が楽しいので。
ー では最後に、今後の目標をお願いします。
最終目標は、先ほども言った通り、誰に聞いても「1番強いクライマーは楢崎」と言われるようになりたいです。
それに近づくためにも、オリンピックで勝つことはすごい大事なことなので、金メダルを取れるように頑張ります!
ー 頑張ってください!応援しています!
そして『DMM英会話』と『iKnow!』で英語を練習して、優勝インタビューにはぜひ英語で答えてくださいね!(笑)
すごいプレッシャーですねえ…(笑)。
わかりました。頑張ります!!
爽やかなルックスの裏側にある、燃えたぎる"負けん気"と強い"向上心"を感じたインタビューでした。
今後ますますアツくなるスポーツクライミング。
これからもDMM英会話は、楢崎選手をはじめ、世界で活躍するアスリートの皆さんを応援します!
『iKnow!』キャラクターふくろうくんと。