
最初はワクワクしながら始めた英会話学習。しかし数ヶ月後、開かれることのない教材や、ログインしなくなったアプリを見て、挫折してしまった自分にがっかりした経験はありませんか?
慌ただしい毎日を送る私たちにとって、英会話学習で最も困難なのは「継続すること」。その継続を支える鍵となる「モチベーション維持」の仕組みについて、DMM英会話コーチングでカリキュラム設計とコーチマネジメントを担当する佐藤さんに具体的な解決策を伺いました。
中学生から本格的に英語学習を始め、英検1級やTOEIC® L&R満点を取得している佐藤さんでさえ、モチベーション維持で難しさを感じた経験がありました。
佐藤 「高校生の英検準1級と大学生の1級取得時は、本当に苦労しました。帰国子女でも1、 2回は落ちると言われるレベルで、覚えなければいけない単語量もぐっと増えます。レベルが上がってくるほど、自分の成長が見えるスパンが長くなっていくものです。『勉強しているけれど、なかなか伸びない』という状況が続くと、つまらなくなって勉強をやめてしまう。やめると勉強したことを忘れて、再開したときにちょっと下がった状態からまた始める。そういうことが1年ほど続いて、本当につらかったですね」
英語学習特有の「伸び悩み」。その踊り場で多くの人が諦めてしまうのです。
佐藤 「1日やらないと3日分勉強したことが消えると言われていて、体感的にもその通りなんです。とにかく少しずつでもいいので毎日取り組まないといけない。学校では担任の先生がいても、毎日の学習管理はしてくれませんよね。いつまでにどの資格を取るか、そのために何をするか、全部自分で決めなければならず、結果的に効率の悪い方法で遠回りしてしまいました」

挫折しかけた佐藤さんを救ったのが、高校の英語の先生の言葉でした。
佐藤 「挫折しそうになったとき、高校の英語の先生が学習時間と英語の伸びを感じるタイミングの相関図の話をしてくれたんです。『英語は毎日伸びを感じるものではなく、努力の量が一定溜まったときに一気に伸びを感じる』と。その話は、学習をやめそうになる度に自分を奮い立たせるきっかけになりました。英語学習の理論を知っていて、成功経験がある人からのサポートがどれだけ大事か、身をもって体験してきたんです」
ひとり学習だと、学習時間、学習方法、モチベーション維持、すべてを自分で管理しなくてはなりません。しかし、多くの英語学習者がその成長を実感する前に諦めてしまうのです。
佐藤 「英語を聞いたときに以前より聞こえるようになった、話すスピードが速くなった、こうした成長の実感は自分だけでは感じにくいですよね。そのため、客観的な指標で成長を測ることが重要になります」
DMM英会話コーチングでは、小さな成功体験の積み重ねを重視したサポートを行っています。具体的にはどんな「客観的な指標」を持つのが有効なのでしょうか。
TIPS1 「毎週の達成目標」を決める
佐藤 「例えば会話で失敗ばかりでつらいという方には、『今週の会話で、これができれば100点というものを一緒に決めましょう』とお話しします。『25分間、一度も日本語を使わなかったら100点にしましょう』といった目標や、コーチからの質問に対して『今3文で答えているので、 4文に今週は増やしましょう』といった提案をします」
受講生に『今週これだけできたら100点というのを作るとしたら、どんなことですか』と訊ねて決めることで、より主体的な学習につながります。この方法により、受講生自身が達成感を感じやすい目標設定ができるんです」
TIPS2 2~3日連続同じ教材を使う
佐藤 「同じ教材を使って、基本的には2~3日連続でレッスンを受けていただくようにしています。毎日教材を変更しない理由は、まさに成功体験を積んでもらうため。復習した内容を次の日に活かせるように連続で受けていただくので、『昨日学んだことが今日使えた』という実感を得やすくなります。毎日新しい教材だと、毎日できないことだらけで嫌になってしまいますからね」
TIPS3 録音機能でbefore/afterを比較する
佐藤 「あまりご自身で伸びている自覚がない方には、会話の音声を聞き比べしてもらいます。『始めたときはこんなふうに話していたけれど、今こんなふうに話せていますよ』と一緒に確認するんです。録音機能がついているので、すべて比較することができ、これまで気付かなかった成長を実感していただけます」
TIPS4 「1分間で何文話せるか」数値化する
佐藤 「私たちは毎回の面談でスピーキングの『1分間で何文話せるか』を測定しています。それが先週と比べて1文増えた、変わらない、といったところを踏まえてフィードバックしています。また単語のテストについても、覚えていれば確実に点数として結果が出る。この『見えやすい伸び』が、モチベーション維持の核心なんです」
そして、コーチの指導方針で佐藤さんが特に重視しているのが「褒め方」です。
佐藤 「褒めとフィードバック、両方のバランスは特に意識しています。褒めるところは多めで、というのが私の考えです。やはり褒められた方がモチベーションが上がっていくと思うため、前回と比べて『こういうところが良くなっていますよ』と具体的に評価することは心がけていますね」

日頃のコミュニケーションも重要な要素だと佐藤さんは語ります。
佐藤 「DMM英会話コーチングでは、週に1回または隔週に1回、50分間の面談で学習の悩みを聞いたり、できていない部分についてはアドバイスしています。しっかり伸びているかどうかも毎回の小テストで確認しているので、コーチが学習者の小さな成長を見失わないように徹底しています。私自身、高校の英語先生に寄り添ってもらった経験があるため、受講生の一歩先ではなく、半歩先を歩くコーチであることを大切にしているんです」
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モチベーション維持は、決して根性や意志力だけの問題ではありません。日毎の目標設定と成功体験の積み重ね、そして継続をサポートする仕組みがあれば、着実に乗り越えることができる壁なのです。

佐藤 奈美さん
合同会社DMM.com 英会話事業部・企業法人チーム コーチリーダー。中学時代から英語学習を始め、高校で英検準1級、大学で英検1級、社会人になってTOEIC®満点を取得。英会話講師、他社コーチ経験を経て、 2021年にDMM英会話にコーチとしてジョイン。現在は大学院で英語教授法を学びながら、コーチマネジメントを担当している。
Writer : 皆本 類
Photographer :きるけ。
Editor :タナK

