
単語帳は何冊も読破した。TOEICのリーディングパートもそこそこ解ける。なのに、いざ英会話になると言葉が出てこない──。「語彙力が足りない」と感じて、また新しい単語帳に手を伸ばしていませんか?
多くの学習者が直面しているのは、語彙の「量」ではなく「質」の問題。知識として頭に入っている単語を、実際の会話でスムーズに使えるようにする転換が、英会話力向上の鍵となります。DMM英会話コーチングで受講生を指導する松本亜里沙さんと、3ヶ月のコーチングを体験した田邉聖華さんに、この壁の乗り越え方を伺いました。

田邉さんは、洋画を字幕なしで観たいという思いから英語学習を始めました。社会人になってから、アメリカのテーマパークで一年半の海外勤務経験もあります。しかし帰国後、英語への向き合い方に悩んでいました。
田邉 「英語は好きだったので苦手意識はありません。でも、帰国後も外国の方を前にすると、ちゃんと喋らなきゃという気持ちが先に立ってしまって…。話が続かなかったらどうしようと硬くなり、話した内容もあまり覚えていないほど、会話は楽しめていませんでした」
コーチングを受ける前は「語彙力がない」という悩みを抱えていました。
田邉「いつも同じ表現の繰り返しで、もっと言い回しを増やしたいと思っていました。TOEICの語彙問題も苦手で、自分には語彙力が足りないんだと思い込んでいたんです」

具体的にどのようなアプローチで「知っている単語」を「使える単語」に変えていったのでしょうか。
松本「決して語彙力がないとは感じませんでした。新しい単語を増やすことより、今、頭のなかに入っている単語を引き出して使う筋肉を鍛えることが大切。それができれば、必ず使えるようになるとお伝えしました」
実は、多くの学習者が同じ思い込みをしているそうです。
松本「『語彙力がない』とおっしゃる方に、インプットの力とアウトプットの力は別物なんですよとお話しすると、皆さんハッとされます」
田邉さんの目標は「知っている単語を使える単語に変える」こと。会話の幅を広げ、様々なシチュエーションで適切な言い回しができるようになることでした。
具体的にどのようなアプローチで「知っている単語」を「使える単語」に変えていったのでしょうか。
TIPS1 日英学習で能動的な想起を鍛える
松本 「「全ての受講生に『iKnow!』という単語学習アプリを使っていただくのですが、田邉さんの場合は日英学習を重視しました。英語を見て日本語が浮かぶ『英日学習』は比較的できていたので、日本語から英語を思い出す『日英学習』に注力したんです。実際の会話では日本語で考えたことを英語で話すので、この練習がスピーキング力につながります」
田邉 「『iKnow!』を1日30分やることを自分との約束にしました。似たような単語で意味が全然違うものを、以前は覚えられなくて苦労していたんですが、毎週テストがあることで、しっかり覚えられているなと実感できたんです」
TIPS2 レッスンで「次回使う単語」を宣言する
松本 「英会話レッスンの復習を毎日送ってくださるのですが、『この文脈にはぴったりのフレーズを知っているはずです』と伝えて、次のレッスンで使いましょうと宿題にするんです。最初は意識的に使わなければいけませんが、何回も繰り返していくうちに自然に使えるようになります」
コーチが音声を聞いているという意識が、適度な緊張感となり、新しいフレーズを使うきっかけになります。
TIPS3 小テストで成長を可視化する
田邉 毎週の小テストで、自分が覚えられているかを確認できました。できなかったところは、なぜできなかったのか、どうすればできるようになるのか、そのポイントを教えてくださるんです。怒られる雰囲気なく、『大丈夫ですよ』という安心感があったからこそ、正直にわからないところを相談できました」
小テストは評価のためではなく、成長を確認し、次のステップを明確にするためのツールになります。
TIPS4 客観的フィードバックで見えない成長を実感する
松本 「受講生の英会話レッスンの音声を聞いてフィードバックしています。相手の講師と話すことに一生懸命なので、以前は使えなかった表現が使えるようになっていても、ご自身では気づかないことが多いんです。それをお伝えすると『本当ですね!』と驚かれます」
田邉 「自分では気づかない成長を指摘してもらえるのが、何より励みになりました。DMM英会話でいろいろな先生と話せますが、それをコーチが継続的に見てくれることで、自分の成長を実感できたんです」
こうした学習法に加えて、松本さんは田邉さんのもう一つの課題にも気づいていました。
松本 「田邉さんの場合、メンタルブロックもありました。本来はもっと話せるはずなのに、何かが押さえつけている。間違いを恐れる気持ちが強いのかなと感じたんです」
田邉 「英語以外では大雑把なタイプなんですが、英語となると『勉強』として捉えてしまって。間違えちゃいけないという思いが強かったんです」
松本さんは考え方そのものにアプローチし、「レッスンは練習する場なので、間違えてもいいい」という認識を伝えました。また、会話の型として『結論・理由・具体例』や『5W1Hで返す』という方法も提供しました。
田邉 型を教わることで、違うアプローチに挑戦できました。わからないことがあったら逆に質問してもいいと言われて、実際に英語で聞いて理解できたとき、これもありなんだって思えたんです」
コーチングを受ける前の不安に対しても、松本さんの受容的な姿勢が田邉さんの継続を支えました。
松本 「『準備しないでいいですよ』とお伝えしています。プログラム開始時に受けていただく英語力チェックは、今の状態を見させていただくためのものなので、繕う必要はないんです」
田邉 「できなかった日も正直に理由を伝えられる関係性が築けました。松本さんがここまで考えてくださった学習計画を無駄にしたくないという気持ちが、自然と頑張る原動力になったんです」

田邉 「3ヶ月の間は必死で、意識的に単語を使おうと心がけていました。でもコーチングが終わった後に、スコア型英語技能テストを受けたとき、単語が自然と口から出てくるようになっていたんです。意識しなくても使えている。その変化を実感できて本当に嬉しかったですね」
松本 「3ヶ月で劇的な変化を期待するのではなく、学習を習慣化させることや、正しい学習のやり方を身につけることが重要です。それができれば、コーチング終了後も自走できるようになりますよ」
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「知っている単語」を「使える単語」に変えるには、意識的な練習と客観的なフィードバックが不可欠です。ひとりでは気づけない成長を可視化し、着実にアウトプット力を高めていく。その伴走があれば、語彙の壁はきっと乗り越えられるでしょう。

松本 亜里沙さん(右)
合同会社DMM.com 英会話事業部 コーチリーダー。高校時代のオーストラリア短期留学をきっかけに英語に興味を持ち、大学で英語を専攻。外資系の客室乗務員として8年間勤務後、英語教育の分野へ。TOEIC対策コーチを経て、3年前にDMM英会話コーチングに参加。TOEIC945点、英検準1級。
田邉 聖華さん(左)
合同会社DMM.com 学校法人チーム。映画好きが高じて英語学習を始め、大学卒業後はアメリカのテーマパークで1年半キャストとして勤務。現在は学校向けにDMM英会話を提案する業務に従事。2024年7月から9月までDMM英会話コーチングを受講。
Writer : 皆本 類
Photographer:ヨシダショーヘイ
Editor:タナK


