
英語の知識はあるのに、いざ英語を話そうとすると頭が真っ白。「間違えたら恥ずかしい」という気持ちが先に立って、言葉が出てこないなんてことはありませんか?実は、英会話習得の最大の敵は「語彙力不足」や「文法ミス」だけでなく、この「メンタルの壁」が大きいかもしれません。
初心者も上級者も、誰もが一度は直面するこの心理的ハードル。忙しい現代人が限られた時間で英会話を習得するために、まず乗り越えるべき壁について、DMM英会話コーチングでカリキュラム設計とコーチマネジメントを担当する佐藤さんに話を伺いました。
佐藤さんご自身も、英会話で困難を経験されたそうです。
佐藤 「大学卒業後、英会話講師として働き始めた頃、 7人の講師のうち5人が外国の方で、英語でのやり取りが必須の環境でした。予想以上に会話についていけず、頭が真っ白になってしまったんです。ちょっとした挫折感を味わいました」
実は佐藤さん、高校で英検準1級、大学で1級、TOEIC®900点台を取得していました。その道のりも決して楽ではなかったといいます。
佐藤 「英検の単語帳はボロボロになるまで、おそらく7~10周は繰り返しました。 TOEIC®も学校の勉強とは別に、毎日通学の電車で演習問題に取り組み、 3~6ヶ月ほど毎月テストを受けに行ったんです。高校も大学も英語に特化したところに進んだのですが、周りは幼い頃から英語に触れる環境で育ってきた方ばかりで、常に劣等感との戦いでした。
大学では教授から出された論文課題を、みんなが授業直前に終わらせるなか、自分は1週間かけて調べないとできず、本当に大変で…。ただ、努力を続けた結果、置いていかれずに済むレベルにはなれたんです」

この体験は決して珍しいものではありません。初心者はもちろん、英語の知識や資格を身につけた後でも、実際のコミュニケーションの場面では全く別の課題が現れるのです。
現在、佐藤さんは大学院で英語教授法を研究しており、この現象を学術的な観点からも分析しています。
佐藤 「さまざまな研究論文を読んだり教授の話を聞いたりするなかで感じるのは、日本人は真面目で、間違えることを恐れる部分が強いということ。教育制度において、『間違えないように』という指導傾向があるからかもしれません。しかし言語習得において、外国語を完璧に話せる瞬間というのは実際にはほとんど訪れません。恥の意識は、思い切って捨てるのがおすすめです」
さらに英会話の習得において、性格的な要素も影響するとのこと。
佐藤 「これまでの受講生を振り返ると、楽観的な思考をお持ちの方が比較的スムーズに上達される傾向があります。『自分の英語は全然ダメで…』とおっしゃる方は、英語力よりも自己肯定感に課題がある可能性があるんです。反対に、楽観的な方は間違いを気にせず、前向きにとらえられるため、結果的に上達が早いように感じます」

一方で、自己肯定感が高すぎる場合にも要注意。過去の成功体験から「本気を出せばすぐできる」と考えて、なかなか英語学習が進まない方もいるそうです。
佐藤 「他にも、なんとなくの英語を実践でこなしてきてしまい、自身の英語力に過剰な自信がある場合もあります。そういう方には実際の会話音声を一緒に聞いて、『ご自身が話されている様子をお聞きになって、どう感じられますか?』と客観的に判断していただくこともあります」
では、間違いを恐れる「メンタルの壁」を乗り越えるには、どのようなアプローチが効果的なのでしょうか。
TIPS1 「完璧でなくても、伝わる」意識を持つ
佐藤 「私なりの手法なのですが、 DMM英会話コーチングの受講生には、第2言語として英語を話している日本人以外の方の動画をお見せすることがあります。『結構間違えていらっしゃいますが、それでもなめらかに聞こえますよね』とお伝えすると、皆さんの表情が明らかに変わります」
TIPS2 複雑な日本語をシンプルに変換する
佐藤 「例えば『昨日は忙しかった』と言いたいときに、普段から難しい表現を使い慣れていらっしゃる方だと、『昨日はすごく多忙でした』という言い方をしようとされます。そこで『多忙って何て言うんだろう』とつい考え込んでしまいますが、実は『busy』で十分。私たちのカリキュラムでは、自分の考える日本語を分かりやすい英語表現に直すトレーニングを組み込んでいます」
TIPS3 恐れず質問する勇気を持つ
佐藤 「英会話講師時代、外国人の同僚との会話で困っていた私は、最初は分からないことがあっても質問を控えていました。だけど、これでは英語力が向上しないと思い直し、同僚たち使っているスラングも、『どういう意味ですか?』と尋ねる勇気を持つように。聞いたことをメモして、家に帰って復習し、次の日に間違ってもいいから使ってみたんです。このサイクルを繰り返すうちに、同僚の先生方も『その使い方は少し変だよ』『いいね、その表現』とアドバイスをくれるようになって、会話への抵抗感がなくなりました」
TIPS4 文化的な違いや背景を理解する
佐藤 「日本語は起承転結の文化で結論が最後に来ることが多いのですが、英語圏はとにかく結論ファーストです。相手を説得しなければならない文化的背景があるので、理由と具体例を必ず述べる必要があります。
また日本人は要求をはっきり言わないのも問題です。日本語だとはっきり言うと失礼になるため、ぼやかして言うのが丁寧とされますが、英語圏でそれをやってしまうと『何を言っているかわからない』と言われてしまいます。
例えば『Can you help me?』だとカジュアルすぎる印象を与えますが、『Could you help me?』なら丁寧な依頼になります。口調は丁寧に、主張ははっきりさせるのが英会話のコツですね」
DMM英会話コーチングでは、コーチの実体験も交えながら、受講生一人ひとりに寄り添った指導を行っています。
佐藤 「英語学習を野球に例えると、基礎練習だけ上手で試合経験が足りない人がとても多いんです。知識は十分あるけれど、実際の英会話という実戦の数が足りない。自分自身、そうした経験を乗り越えてきた専属の日本人コーチがメンタル面もサポートしていきます」
また英会話学習者が最も不安に感じるのは、「自分の英語が通じているかわからない」という課題。それに対して、DMM英会話コーチングでは具体的な解決策を提供しています。
佐藤 「DMM英会話コーチングでは、受講生が1~2週間の期間内に 受 け ら れ た レ ッ ス ン の う ち 1 回 分 を 、コ ー チ が 必 ず 聞 い てチェックしています。『しっかり通じていますよ』『これは通じにくいレベルの間違いなので注意しましょう』といったフィードバックが安心感につながるという声をよくいただきます。ぜひ気負わず取り組んでほしいですね」
-
『メンタルの壁』を乗り越える大きな一歩は「慣れる」こと。完璧を目指すのではなく「間違えてもいいから伝える」という心構えで、着実に『慣れ』を自信につなげていきましょう。

佐藤 奈美さん
合同会社DMM.com 英会話事業部・企業法人チーム コーチリーダー。中学時代から英語学習を始め、高校で英検準1級、大学で英検1級、社会人になってTOEIC®満点を取得。英会話講師、他社コーチ経験を経て、 2021年にDMM英会話にコーチとしてジョイン。現在は大学院で英語教授法を学びながら、コーチマネジメントを担当している。
Writer : 皆本 類
Photographer :きるけ。
Editor :タナK


