
英語自体に苦手意識はない。日常会話なら問題なくこなせる。でも、ビジネスの場面になると途端に言葉に詰まる──。実は「ある程度話せる」からこそ見落としがちな壁がありました。
カジュアルな会話と、信頼関係を築くビジネスコミュニケーションには大きな隔たりがあるのです。DMM英会話コーチングで受講生を指導する松本亜里沙さんと、3ヶ月のコーチングを体験した田邉聖華さんに、中上級者特有の壁とその乗り越え方を伺いました。
田邉さんは、アメリカのテーマパークで1年半キャストとして働いた経験があります。日常的なコミュニケーションには困らなかったものの、帰国後、ある気づきがありました。
田邉 「アメリカで働いていた当時は、同じ表現を繰り返し使っていけば、ある程度のコミュニケーションは取れました。文法が間違っていても、多国籍な環境のため、みんな理解してくれたんです。でも、それで『話せる』と思っていたのは勘違いでした」
帰国後、本当にネイティブの友達と話したとき、聞き返されてしまったことで初めて、自分の英語力の限界に気づいたといいます。
田邉「話すことはできる。でも、どこがどう間違っているのか、自分ではわからなくて。ビジネスの場面で信頼関係を築くにも、もっとちゃんとした英語力の基盤が必要だと感じました」
そんな田邉さんをサポートする松本さんは、外資系航空会社の客室乗務員として8年半、英語を使って働いてきた経験があります。
DMM英会話コーチングを始めるにあたり、松本さんは田邉さんにレベル4教材を提案しました。
田邉「教材を見たとき、正直『こんな簡単なの?』って思いました。海外で働いた経験がある自分には基礎レベルすぎるんじゃないかって」

しかし、実際に取り組んでみると、予想は大きく外れました。
田邉「例えば『家族について話しましょう』というトピック。気軽なものに感じますよね。でも深掘りされていくと、文法的に正確に説明しようとすると全然言葉が出てこない。実際にできたのは70%程度だったんです」
松本「独学でやってきた方は、ご自身のレベルに合わない教材を選んでしまうことが多いんです。簡単なトピックでも、よどみなく話せない段階で難しい教材に取り組んでも効果は薄い。基礎を固めることが何より大切なんです」
田邉「自分の現在地と目標地点をちゃんと把握できていないと、難しい教材をやって『なんとなくできた』で満足してしまう。松本さんのサポートがあって初めて、自分の弱点がどこにあるのか、どこから積み直すべきなのかが見えてきました」
コーチングが進み、英会話に慣れてきた頃のこと。
田邉 「2週間目くらいから、『この質問がきたらこの単語を使おう』と予測できるようになって。1ヶ月経つ頃には、会話がすごく楽しくなってきたんです。でも、その『楽しさ』が曲者でした」
会話が楽しくなることは成長の証ですが、同時に想定外の壁に直面します。
田邉 「楽しく話せることに夢中になって、学習目標を見失ってしまったんです。コーチから『次回このフレーズを使いましょう』と言われていたのに、会話が盛り上がると忘れてしまっていました」
松本 「教材から外れて会話が盛り上がるのはとても良いことなんですが、音声を聞き返すと、主語や動詞が抜けていたり、フォーマルな言い方が使えていなかったり。中期にはこういった課題が見えてきました」

田邉さんの経験から、中上級者がビジネスレベルの英語を身につけるための具体的なアプローチが見えてきました。
TIPS1 背伸びせず、基礎を徹底的に固める
田邉 「自分の目標値と現在地をちゃんと把握できていないと、難しい教材をやって『できた』で満足してしまう。松本さんのサポートで、基礎から積み直すことができました」
TIPS2 レッスン音声を客観的にレビューする
松本 「週1回または隔週で、レッスン音声を聞いてフィードバックしています。『ここはどんな風に伝えようと思っていらっしゃいましたか?』と具体的に質問を投げかけ、『次回はこのフレーズを必ず使いましょう』とコミットしてもらう。この繰り返しが成長につながります」
DMM英会話で様々な講師と話す経験を、コーチが継続的にモニタリングすることで、成長を最大化できるのです。
TIPS3 短期・長期の2つの目標を設定する
松本「3ヶ月後にどんな自分でありたいか、そして最終的にどう英語と付き合っていきたいかを最初に設定します。短期目標が達成できていないのに、長期目標が見えることは絶対にありません。実現可能な目標を一緒に設定することが大切です」
TIPS4 目標に合わせて学習をカスタマイズする
松本 「例えば、カナダ駐在で『友達を作りたい』という方には、カジュアルな口語表現やユーモアを交えた自己紹介を重点的に指導しました」
田邉 「ビジネス向けの堅い英語だけでなく、人としてコミュニケーションを取るための英語も学べました。おかげで、友達とも、ビジネスシーンでも使える表現の幅が広がったんです」
コーチング終了後のテストでは、その成果が表れました。
田邉 「自分から語彙がよく出てくるようになったんです。使えるフレーズも確実に増えました。アメリカの友達と話すときも、かなりスムーズになって。ビジネス英会話の前提となる、人との信頼関係を築くための英語も学べました。おかげで、友達とも、ビジネスシーンでも使える表現の幅が広がったと感じます」
そんな田邉さんにとって、コーチはどんな存在だったのでしょうか。
田邉「担任の先生よりもっと近くて、パーソナルトレーナーよりも優しい。しいて言えば、家庭教師の先生に近い感覚でした。DMM英会話のレッスンがテストの場だとすると、松本さんはそこに向かう道しるべを示してくれる存在。最初は1日2時間の学習時間確保に不安がありましたが、例えば『出かける前の時間に単語学習をやれそうですか?』と具体的に提案してくださったりして。できなかった日も正直に理由を伝えられる関係性があったから続けられたんです」
松本 「3ヶ月で劇的な変化を期待するのではなく、学習を習慣化させること、正しい学習のやり方を身につけることが最も重要です。それができれば、コーチング終了後も自分の力で継続できるようになります」
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「ある程度話せる」中上級者だからこそ、見落としがちな基礎の穴。カジュアルな会話とビジネスコミュニケーションの違い。客観的な視点でこれらの課題を可視化し、一つひとつ丁寧に積み上げていきましょう。

松本 亜里沙さん(右)
合同会社DMM.com 英会話事業部 コーチリーダー。高校時代のオーストラリア短期留学をきっかけに英語に興味を持ち、大学で英語を専攻。外資系の客室乗務員として8年間勤務後、英語教育の分野へ。TOEIC対策コーチを経て、3年前にDMM英会話コーチングに参加。TOEIC945点、英検準1級。
田邉 聖華さん(左)
合同会社DMM.com 学校法人チーム。映画好きが高じて英語学習を始め、大学卒業後はアメリカのテーマパークで1年半キャストとして勤務。現在は学校向けにDMM英会話を提案する業務に従事。2024年7月から9月までDMM英会話コーチングを受講。
Writer : 皆本 類
Photographer:ヨシダショーヘイ
Editor:タナK


